ここのところ、青山プロダクションを標的にした根も葉もない噂が業界をちらほら飛び交っている。
そもそもは工藤本人を罵倒した記事が、出る杭は叩く、もう出ないように叩く、という手合いの女性週刊誌に載ったことが始まりだった。
裏金を遣ってキー局のチーフディレクターを懐柔し、タレントの売り込みをしているだの、バックにいる中山会を盾に脅しをかけて仕事を獲っただのと、プロダクションにとってはイメージダウンにつながるような記事がまことしやかに書き綴られ、スポーツ紙も我先に取り上げ、テレビのワイドショーまでも騒ぎたてた。
ネット上でも尾ひれのついた記事が出回っている。
運よく現総理のダメぶりが騒ぎ立てられ、ちょうど参議院選挙を控えて各党の選挙戦の話題がトップを走っているので、その影に隠れて大きく取り上げられなかったのは不幸中の幸いだった。
そんな噂なら今に始まったことではない、と、苦々しく思いながらも放っておいた工藤だが、彼が海外にいる間に、青山プロダクションの看板女優中川アスカと某映画監督との不倫話というものが浮上、しかも工藤と二股なんて話まで飛び出した。
特に工藤をひどく怒らせたのは、そのアスカが、青山プロダクションが大切に育てている新人南澤奈々と工藤を取り合って大喧嘩した、なんぞという明らかに捏造された中傷記事である。
「ほんっと、くっだらないアホ話、よく考えつくわよね~アッタマくるっ!」
窓際のソファに陣取り、こちらも怒りにまかせて髪をかきあげたアスカは、昨日テレビ局の仕事が終って局を出る時にワイドショーのリポーターにつかまり、逃げ出すのに苦労したのだ。
「こんな根も葉もない話、どこの三流ライターが書いたシナリオなわけ?」
冷静そうにきっぱりひと言否定した彼女は、工藤が帰ってきたのを知って、マネージャーの秋山を従えてオフィスにぷんすか怒鳴り込んできたのだ。
その横では奈々が朝早くオフィスにやってからずっと涙目を伏せている。
人気アイドル女優の道をまっしぐらな奈々は、今どき珍しいくらいすれていない少女なのだ。
テレビを見てかんかんに怒った奈々の父親の電話を取り次いだ鈴木さんも、成す術もなくパソコンの前でようすを見守っている。
その電話を鈴木さんから回してもらって散々に怒鳴られる羽目になったのは良太だ。
如何せん奈々の父親には覚えめでたい良太でも、今回はさすがにその怒りを静めるのに苦労した。
噂が根も葉もないでっち上げで、喧嘩をしたと書かれている日、アスカは海外にいたし、奈々もロケで沖縄にいたのだ、青山プロダクションへの嫌がらせだと思うので今調査しているところだ、と説明し、ようやくのところ納得してもらった。
「アスカの不倫話くらいならまだしも、奈々がどうしただと? くだらん」
工藤は憤懣やるかたならぬといった態でうろうろと歩き回りながら、煙草を噛む。
「ちょっと、アスカならまだしもって、何よ、それ!」
カッカきたまま立ち上がったアスカが工藤にくってかかる。
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