「お前がその程度でやり込められるタマじゃないってことくらい誰でも知ってるだろ!」
「ジョークもほどほどにしてよ! あたしが工藤さんみたいなオヤジとどうにかなるわけないじゃない! 奈々なんかもっとジョーク、ジョークっだわ! オヤジがいいなんて良太くらいなもんよ!」
「二人とも、怒鳴りあっても何の解決にもならないでしょう! とにかく誰がなぜこんなデマを流したか突き止めるのが先決です!」
怒りのやりどころがない二人が言い争うのに仲裁した秋山本人も声を荒げている。
「どうも奈々ちゃんのことが原因みたいなんですよね」
どさくさに紛れたアスカのセリフに少し頬を赤らめながら良太が口を挟む。
「どういうことだ!?」
「奈々がどうしたってのよ?」
ハッと奈々が顔を上げると同時に、工藤とアスカはハモるように良太を問い詰める。
「いや、奈々ちゃんがどうのということでなく、ここんとこ奈々ちゃんの人気が急上昇してることもあるし、ほら、今のドラマの役、確か、他にも候補何人かいましたよね? それに奈々ちゃんの演技が主役を喰ってるっていうような噂に一時沸いたことあったじゃないですか」
案外冷静な良太に説明されて、工藤はただでさえ鋭い目をさらに険しくして椅子に腰をおろした。
「やはりライバル社の陰謀か…」
秋山が口にすると、「長田プロの仕業?」とアスカがズバリと名前を挙げた。
「滅多なことを口にするもんじゃない」
「だって奈々と最後までキャスト争ってたの、長田プロの子でしょ? それこそ主役の内山利穂ってさ、あそこの社長の愛人じゃない」
秋山が窘めるのも問題にせず、アスカはいかにもアホらしいという仕草で声高に口にした。
長田プロダクションは有名タレントを多く抱える老舗の芸能プロダクションで、社長のワンマンぶりは業界で知らぬものはない。
火のないところから出た噂が勝手に一人歩きして簡単にタレントひとりくらいどうにでもしてしまう。
そうでなくてもこの業界では、どんな突拍子もない出来事にも打ち勝つ覚悟でなくては生き抜いてはいけないのだ。
「とにかく、今、小田先生にお願いして調査してもらってますから。状況によっては訴訟を起こすとかも考えなくてはなりませんし」
「小田がそんな調査を引き受けたのか?」
ジロリと睨むように工藤が尋ねると、良太は顔を引きつらせて無理やり笑顔を作る。
「はい。ここまでやられたら黙っちゃいられないっておっしゃって」
ここのところの工藤に対する誹謗中傷には頭にきていたから、良太は小田に工藤に対する誹謗中傷記事の調査を頼んだのである。
この上、もし土方が書かなかったことまで公になったら、と気が気ではない。
フン、と工藤は鼻で笑う。
青山プロダクションの顧問弁護士である小田和義には、この会社に入って以来、良太も家の問題やら保険のことやらで相談にのってもらっている。
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