春雷12

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「当たり前だろうが! 何のためにアスカさんとかみんな巻き込んで、でっち上げスクープ撮らせたと思ってんだよ!」
 呆れて良太がきつく言うと、沢村は不機嫌そうにまたグラスに酒を注ぐ。
「……で? 何でアスカさん、ここで管巻いてんだよ」
 ようやく周りが見えたという顔で、亜弓に凭れかかったまま眠ってしまったアスカを見て沢村が聞いた。
「……アスカさんにはアスカさんの、悩み事があるんだよ」
「へえ……。んなもんとは縁のない人だと思ってた」
「まあな。たまには………」
 いや、もし仮に秋山がその佐藤さんと実は付き合ってますとかってことになったら、絶対、これは、アスカさん、仕事に響くぞ。
 それを考えると良太は頭を抱えたくなった。
 第一何もなくても、アスカを扱えるのは秋山以外にないと思われた。
「クッソ! 八木沼のやつ!」
 沢村は沢村で吐き捨てるように言って、グラスを空ける。
「あのさ、この場合八木沼選手は被害者の方だろ」
「あいつがこんな仕事受けるからだ!」
「それは言いがかりだろうが」
 まあ、沢村のことだから、何かに当たりたいんだろうけど、八木沼選手今頃くしゃみしてそう。
「妹は何でいるんだ?」
「研修で来てて、久々俺の部屋に寄ったら、こういうテイタラクだ」
 すると亜弓が良太を見た。
「ねえ、アスカさん、このままだと風邪引くし、私も動けない」
「仕方ないな、ベッドに寝かせるか」
 良太は沢村に向き直り、「アスカさん、ベッドに運んで」と言った。
「指図しやがって」
 文句を言いながらも、沢村は立ち上がり、アスカをひょいと抱き上げる。
 自分にはできそうにないと思ったが、簡単にやってくれる沢村が良太は小憎らしい。
 良太は毛布を剥がして、沢村がアスカを横たえると、そっとかぶせた。
 シーツ新しいのに換えといてよかった。
 良太は心の中でホッとする。
 沢村は立て続けに酒を飲んでいるが、まだ足取りもしっかりしている。
 良太があんなに飲んだら、ふらついて何もできないだろう。
 そんなところもやっぱり小憎らしい。
「ねえ、このまま寝かせといていいの?」
 炬燵に脚を入れながら、亜弓が聞いた。
「仕方ないだろ。もうこんな時間か。ホテル、送って行くよ。俺、飲んでないし」
「いいわよ。アスカさん心配だし、明日の朝、帰る」
「でも、だから、寝るとこなんかないぞ?」
「いいよ、このまま炬燵で寝るから。それより沢村こそ、何? アスカさんとのことがフェイクって、まさか沢村までお兄ちゃん狙いじゃないよね?」
 きっときつい目で亜弓は沢村に食って掛かる。
「るせえな、こいつはとっくに俺を振ってオヤジに入れ込んでんだよ」
「おい、沢村!」
 聞き捨てならない暴言を吐く沢村を、良太は睨み付ける。
 工藤とのことは亜弓にははっきり言ったわけではないし、良太としてはしばらくは曖昧のままで行きたかったのだが。
「ちょっと、それってお兄ちゃんにあんたが言い寄ったってこと?」
 そっちかよ、と良太は今度は亜弓を見た。
「まだ佐々木さんに会ってなかった頃の話だ」
 沢村も真っ向から亜弓を睨み付けた。
「沢村、バカモテなのに、佐々木さんなんだ? まあ、あの方ならわからないでもないけど。でも、お兄ちゃんまで、大学の頃までは相手って女だったよね? 高校時代はかおりさんって彼女もいたし、何故か」
「何故かってどういう意味だよ」
 良太はそこに引っ掛かりを覚える。
「だって、ずっとフラれっぱなしだったじゃない」
 すると沢村がフンっと鼻で笑う。
「恋愛下手っていうか、いっつも直球過ぎるって言うか、シチュエーションとか、言葉とかもうちょっと考えてってとこがないのよね」
 それを聞くと、良太もごもっとも、と頷きそうになる。

 


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