アスカが髪を乾かしている間に沢村を起こし、良太はコーヒーをセットすると、棚からカップを三客取り出した。
冷蔵庫でポカリを見つけて飲み干した沢村がバスルームを使って出てきた頃には、亜弓が帰ってきた。
「サンキュ」
コンビニの袋を炬燵の上に置いた亜弓に、良太が声を掛ける。
「サンドイッチとかパンとかおむすびとかいろいろ買ってきたよ」
それらを広げる前に、「これでいいかなあ」と亜弓はアスカに別の袋を手渡した。
「ありがとう、ごめんね!」
亜弓も自分用に歯ブラシなども買ってきたようで、アスカが着替えて出てくるとバスルームに入った。
「朝飯食べたら、みんな送って行くから」
炬燵の上に並んだサンドイッチやおむすびを手に取って食べるみんなの前に、良太はコーヒーを置いた。
「亜弓、時間大丈夫なのか?」
壁の時計は八時になろうとしている。
「うん。本宮さんとはお昼食べてから講演会に行くから。あ、でも、ホテル帰ってシャワー浴びたいから、チェックアウト十一時だし」
「わかった」
良太が頷くと、「え、彼氏と一緒だったの? 夕べ帰らなくて大丈夫だった?」とアスカが聞いた。
「ホテルは別だから。まだ付き合い始めたばっかだし」
「そうなんだ」
納得してコーヒーを飲んだアスカだが、「いいな、あたしも彼氏と旅行とか行きたい」などと呟いた。
それを聞くと、良太も亜弓も昨夜のことがあるので言葉が出てこない。
「しかし、隣、いないんだろ? ダチが来た時くらい、向こうの部屋使えばいいじゃないか。こんなせっまいとこに固まらなくても」
今度は沢村が余計なことを言った。
「そうだよね、いつの間にかドアができてるし」
やっぱり気づいていたらしい亜弓も珍しく沢村の意見に頷いた。
「まあね、良太と工藤さんにはうまくいっててもらわないと。特に良太を怒らせると会社がガタガタになるからね~、工藤さんも思案したんじゃない?」
あのドアはもともとあったもので、二つの部屋に分けた時に壁にしていただけで云々と良太が言い訳をする前に、アスカがさらに余計なことを言う。
「わかった。やっぱりお母さんたちの反応を見て、話してみるといいよ、お兄ちゃん」
「え、いや、だから………」
俺と工藤は違うんだとは、口に出してまたアスカや沢村に何か言われるも嫌だったので、良太は言葉を飲み込んで小さくため息を吐いた。
いずれにせよ沢村と佐々木さんのことは、二人で話すべきことで俺にはどうしようもできないが、アスカと秋山のことは少し様子を見なければならないだろう。
キャットタワーの上の方に避難している二匹のために、水とカリカリを器に置いてから、良太は送っていくと三人を促して部屋を出た。
「本宮さんによろしく」
「ありがと、また連絡する」
ホテルのエントランス前で助手席の亜弓を降ろすと良太はアスカのマンションへとハンドルを切る。
「今日は午後からだっけ?」
「うん、三時から」
大丈夫かなあ、と若干の不安を覚えながら、良太はマンションに入って行くアスカの後ろ姿を見送った。
「お前、酒残ってないのか?」
ミラーで見やると、後部座席でふんぞり返っている沢村の顔はキリリと清々しさすら窺える。
「あれしき」
確かにこのガタイだからな、と良太は苦笑する。
「佐々木さん、仕事でてんぱってるんだから、終わるまでちゃんと見守ってやれよ」
定宿にしているホテルの駐車場まで沢村を送ると、「まだ、許可降りねえんだよな、佐々木さんの」と沢村が言った。
「俺はさ、やっと自分の帰るところを見つけたつもりで、ちょっとした部屋を作りたいだけなのによ」
「ああ、お前が買った土地に家を建てるってやつ?」
沢村は無言のまま頷いた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
