「これからずっとって思ってるんなら、もうちょいじっくり佐々木さんに話してみればいいだろ? 先走ってぎくしゃくするより」
沢村の焦燥感をたしなめるように、良太は言った。
「……まあな」
ちょっと不服そうな沢村もわかっているのだろう。
これからずっと、か。
家っていえば、母さんや父さんにも、仮住まいじゃない家、建ててやれればなあ。
建てるんじゃなくても、前のうちみたいなボロ屋でも買うとか。
いずれにせよ俺の借金返してからだよな。
沢村を降ろして、良太は会社へと車をUターンさせる。
ま、俺と工藤に、この先なんてあるかどうかわからないしな。
今のあの部屋だって、いつまでいられるかもわからないんだし。
大体、俺が好きだなんて言ったから、ずるずると続いているってやつだし。
アスカの涙を思い出すと、もしか同じような一方通行だったら、この先きついだろうと思う。
「どうやって、秋山さんから本心聞き出せるかだよな。あの人、ほんっとポーカーフェイスだから」
宇都宮さんが俺に告ったことなんか知ってたくせに、おくびにもださなかったぞ、あの人。
ってか、それが当然なんだけど。
個人情報っつか、プライバシーの問題だし、宇都宮さんも俺も知らなかったわけで。
いくら内輪だからっても、もちろん亜弓は口外するようなヤツじゃないとはいえ、何だかやたらいろんなこと亜弓の前で暴露されちゃったな。
あーあ、こうなったらもうなるようになれだ。
自分のことはとりあえず置いておいても、秋山のことはどうしたものかと良太は頭を悩ませる。
翌々日の夕方から、良太は「今ひとたびの」のロケに森村と同行した。
アスカは竹野とぶつかることも懸念されたが、撮影が進むにつれてむしろ二人で笑い合っているのを見ることもあった。
そのことをアスカに尋ねると、「竹野が丸くなったんじゃない? 多分、良太のお陰よ」などと言う。
良太とも相変わらずよく話すし、自分のお陰などとはおこがましいが、確かに、初対面の頃と比べると竹野は明るくなったし、言葉から棘が取れた気もする。
だが今度はアスカと秋山に不安分子が沸いていた。
今のところ、アスカは表面上は何の問題もなく、演技にも文句をつけるところはないように思われたし、秋山もいつものように怜悧な眼差しで撮影全体をきっちりと見渡しているようだった。
こうなったら、秋山さんに直談判か?
隙のない秋山から何かしら探るというのは無理な相談のように、良太には思えた。
だが、撮影の途中で秋山は携帯に電話が入ったらしく、そっと姿を消した。
後をつけるわけにもいかず気になっていた良太に、秋山が近づいた。
「すまないが個人的な所用で、少し時間をもらいたいんだが」
「え、いいですよ。アスカさんは俺が見てますから」
「一時間ほどで戻るのでよろしく頼む」
「わかりました」
良太は頷いたが、いや、これは、やっぱヤバイのかも、と心の中で訝しみつつ、少し離れたところで撮影を見ていた森村を呼んだ。
「え? 秋山さんを?」
森村は秋山を尾行してくれという良太に驚いた顔をするが、すぐ気を取り直す。
「Copy! まかせて」
タクシーを拾った秋山を、森村も後ろから来たタクシーで追跡していると、良太のラインにメッセージが届いた。
『Tホテルに入って行く』というメッセージが英語で届く。
急いでいる時はまだ日本語は難しいようだ。
ホテルだって?! マジ?
画面を見ながら、良太は心の中で叫んだ。
『待ち合わせたらしい女性と一緒にラウンジに入って行った』
うわあ、やっぱヤバイぞこれは。
ラインのメッセージに良太は眉を顰めた。
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