翌朝、良太の携帯に森村からラインが入ったのは十時を少し過ぎた頃だった。
『男と女二人、佐藤に会いに来た』
そういったメッセージとともに送られてきた画像には意外な人物が写っていた。
「小田弁護士と安井さん」
安井は小田弁護士事務所に所属する女性の司法書士だが、主にパラリーガルとして勤務している。
二人はそれから佐藤とともに部屋に上がって行ったようだ。
「ってことは、佐藤さんが何か問題を抱えていて、秋山さんが小田弁護士を紹介したってことか」
ついブツブツと口にしていると、「良太ちゃん、お弁当買いに行くけど、どうする?」と鈴木さんが聞いてきた。
「あ、一緒にお願いしていいですか?」
「わかったわ。マルネコさんに行こうと思うんだけど、良太ちゃん、あんまり根詰めないようにね」
心配そうな顔でそう言うと、鈴木さんは事務所を出て行った。
「ブツブツ言ってたからな」
良太は苦笑するが、頭の中ではまた秋山のことに舞い戻る。
そうすると、やはり秋山と佐藤の間には色恋沙汰は介在しないということだろうか。
いや、必ずしもそうとは限らないよな。
恋人のトラブルを解決するために、ってか、緊急を要するような事態なんだ?
小田弁護士を紹介するだけなら、わざわざ撮影を抜け出して会いに行ったりしないよな。
鈴木さんと弁当を食べ終えて、お茶を飲んでいるところへ、マックの袋を抱えて森村が戻ってきた。
「お帰りなさい」
「ただ今戻りました。ランチしちゃっていいですか? 腹減っちゃって」
森村は窓側のソファに陣取って、大きなハンバーガーとポテトを取り出した。
「コーヒー淹れるわね」
鈴木さんがにこにことキッチンに向かう。
「ありがとうございます!」
よほど腹が減っていたのか、あっという間に平らげた森村の向かいに良太は座って、「それで?」と声を落として促した。
「お客さんが帰ってから、チェックアウトの時間まで待ってみたんですけど、出てこなかったんで、まだ帰らないのかなと思って」
「なるほど。とするとこれ以上首突っ込みようがないな」
森村の話を聞いて、良太は言った。
「お疲れ様。今日はWEBの方やってくれるかな」
「Copy!」
すると森村はコーヒーを持って早速自分のデスクに向かう。
「休憩してからでいいよ。急ぎでもないから」
制作会社に作ってもらった会社のサイトは、時折、良太が情報を更新していたが、ITが得意だという森村にここずっと任せている。
所属タレントそれぞれのSNSなどを立ち上げて情報を上げているのだが、南澤奈々はインスタなど好きで自分で画像をアップしたりしているものの、志村は得意ではない、アスカは忘れてしまう、小笠原は面倒くさいという理由で、これまで情報は少なかった。
が、森村が、それぞれの仕事風景などを撮ってアップするようになってから、みんなのフォロワーの数も増えてきた。
「アスカさんのカッコいいやつ、撮れたからアップします!」
森村が言った。
「カッコいいヤツか。らしいよな」
アスカがいたなら、美人なヤツにしてよ、と文句が飛んできそうだと、良太は苦笑する。
「竹野さんも一緒に乗っけていいって言ってたから」
「へえ、それはまたいいかもな」
竹野はSNSが嫌いだと言って自分ではやっていないはずだ。
ほんと、彼女、丸くなったかも。
久しぶりに三人でまったり仕事をしていたところへ、意外な人物がドアを開けて入ってきた。
「こんにちは」
「小田先生、お世話になっております」
難しい顔をしてるななどと思いつつ、良太は立ち上がって出迎えた。
「工藤は戻りが夕方頃になりますが」
「いや、今日は良太くんにね」
何だろうと思いつつ、良太は小田をソファへと案内する。
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