春雷20

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 まさかまた沢村の件で何かあったとか?
 いや、それとも工藤関連?
「ほかでもない、実は遠野に聞いて、君の知り合いで警護やなんかもやってくれる人たちがいると」
 良太の逡巡をよそに、小田は徐に口を開いた。
「はあ」
 良太は驚いた。
「ただ、表立ってそういう仕事をしているわけではないと聞いたので、できれば君から打診してもらえればありがたいんだが」
「あ、はい、連絡は取れますが、彼らはプロガードマンというわけではありませんけど」
「ああ、それも遠野から聞いてる。むしろいかにもな人ではない方がいいかと思うんだが」
「実は千雪さんの友人のグループなんです」
「千雪くんの? なるほど、であれば余計にお願いしたいが、申し訳ないが内密に」
 これはおそらく秋山から紹介された佐藤さんの案件ではないかと、良太は察した。
「代表は加藤さんと言います。皆さん、それぞれ仕事を持っているのですが、こちらから依頼すれば、それぞれの都合に合わせて動いてくれます。もし、内密にとおっしゃるのでしたら、この事務所で打合せをされても構いませんが。上の会議室とか」
 良太の提案に、「それは有難い。まず、その加藤さんに連絡を取ってもらえるかな?」と小田は言った。
「ちょっと急を要するのだが」
「では今、連絡取ってみます」
 良太はデスクに戻ると、加藤の携帯に電話を入れた。
 加藤はすぐに出て、小田弁護士が警護などを依頼したいと告げると、今日の六時過ぎならこのオフィスに出向くと言ってきた。
「早速で有難い。私は一度出直しますが、よろしくお願いします」
 小田はそう言って、オフィスを出て行った。
「何だか怪しいことになってきましたね」
 良太のデスクまでやってきた森村がボソッと言った。
「うん。おそらく佐藤さんのことだと思うけど、とりあえず知らないことにしとこう」
 コソっと囁いた良太に、森村は頷いた。
 羽田に着いたと工藤から電話があったのは、案外早く、三時少し前だった。
 迎えに行きましょうかという良太に、「四時半頃、美聖堂まで来てくれ」と工藤は言った。
 斎藤とアポがあるらしく、タクシーで美聖堂に向かうという。
 電話を切ると、良太はちょっとテンションが上がる。
 最近お互いの仕事があって、それぞれに動いているし、こうして工藤を迎えに行くのは結構久しぶりな気がする。
 入社したばかりの頃は、あっちへ行けどこへ来いと、ほぼ工藤の運転手をやっていた記憶がある。
 先日、工藤に、森村を迎えにやると言ったら、お前は来ないのかみたいな言い方をされた。
 そんなことが、なんだかちょっと良太は嬉しかったりしたのだ。
 お手軽過ぎないか? 俺って。
 それに、帰りの車の中で、小田のことを報告するつもりだった。
 小田には会社ごと世話になっているので、工藤も否というわけはないが、一応工藤の耳に入れておかなくては。
「CM、アスカさんですか?」
 四時半少し前に美聖堂の駐車場に入り、工藤のキャリーケースをトランクに入れ、工藤が後部座席に乗り込むと、良太はハンドルを切りながら聞いた。
 アスカはこれまでも美聖堂のイメージキャラクターとして、幾度もCMの仕事をしてきている。
「ああ。プロジェクト自体がかなり進行が遅れているから、ドラマのスケジュールを縫って、撮影に入る」
「そう、ですか」
 てことになると、尚更アスカさんがペースを落とさないように注意しておかないと。
「なんだ?」
「あ、いえ、そうだ、今日六時半に、小田先生がいらっしゃるので上の会議室お借りします」
「小田が? どういうことだ?」
「実は、緊急に加藤さんたちの手を借りたいとおっしゃって、内密にしたいということでしたので、会社の会議室を勧めました」
 端的に説明する良太に、「また面倒ごとか」と工藤は言った。

 


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