花の宴5

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 息子の影響で結構野球好きな鈴木さんも、まあそう、とニコニコ笑っている。
「高校球児かぁ、青春だなー」
 俊一がジジムサイ口調で頷いた。
「肇さんが主将でキャッチャー、かおりさんがマネージャー? 何、何、そこで恋はなかったの?」
「っふふ、良太くんの元カノ、でーす!」
 小笠原の突っ込みにかおりが高らかに宣言する。
「うおおおお、それで、それで?」
 みんなの視線が俄然かおりに向いた。
「これは複雑なことになってきたんじゃないの、良太ちゃん!」
 俊一が良太をからかう。
「あらぁ、良太ちゃんの元カノ、だって、高広、どうすんの?」
 こちらも面白がってひとみが工藤の横でケタケタ笑う。
 言葉を返すのもうっとおしくて、工藤は渋い顔でグラスを空ける。
「こんばんは」
 ドア口で声がすると、「ユキ、遅かったじゃない!」とアスカが嬉しそうに出迎える。
 良太が振り返ると、そこにはひょいと顔をのぞかせた千雪といつもながら不機嫌を隠そうともしない京助が立っていた。
「お邪魔さんです、工藤さん」
「お前まできたのか、京助」
 千雪が声をかけると、工藤は京助に言った。
「お招きにあずかって。そこのワガママ女のたっての要望で」
「京助なんか呼んでないわよーだ」
 ずけずけと皮肉る京助に、アスカが言い返す。
「おお、そうか、じゃ、パイは小夜子のとこでも持ってくか」
「え、だめぇ、これはいただくわ」
 アスカはすばやく京助と千雪が各々手に掲げている丸い包みを取り上げる。
「京助のパイは美味しいのよ、あ、こっちはキッシュで、こっちは、きゃあ、イチゴのタルトだ」
 テーブルで袋から皿ごと取り出しながら声を上げるアスカの横から、俊一が千雪に、「うっす」と声をかける。
「おう」と返す千雪だが、メンツを見回して少し眉を顰めた。
 というのも、内輪だというので、いつものメンバーと思ったのだが、仕事では挨拶をしたことがあるが、プライベートでは顔を会わせていない二人、下柳とひとみがいたからだ。
 自分の持ってきた焼酎を俊一のグラスにとくとくと注いでいる下柳は何も気づいていないようだが、入ってきた途端、ひとみと真っ向から目が合ってしまった。
 しかも、正確にはひとみと千雪は昔一度、実は軽井沢で工藤と一緒にいた時に会ったことがあるのだ。
 ま、どうでもええけど。
 それを彼女が覚えていると面倒くさいとは思ったものの、千雪はアスカからワインを受け取った。
「会社の花見にしちゃ、えらくいいワインあけてるじゃねーか」
「一言多いのよ、京助は。ワインなんて、わかるの?」
「コルトン・シャルルマーニュ」
「あら、ワイン仲間がここにひとり」
 ボソッと言った京助を振り返って、ひとみが言った。
「いや、兄貴がワインとか酒詳しいんで」
「あら、高広よりはマシよ、京助さん?」
「綾小路京助です」
 すると、ふっとひとみの表情が一瞬硬くなった。
「綾小路さん? すると、こちらは?」
 ひとみは真っ直ぐ千雪を見据えた。
「小林千雪だ。もう会ってるだろ」
 横から口を挟んだのは工藤だ。
「あらら………、びっくり。お世話になっておりますわね、センセ」
「どうも」
 千雪はにこりともせずに言った。
 心の中では、ウザい、と呟いた。
「ユキぃ、ちょっときて、手伝ってぇ」
 ひとみが興味津々で見つめている千雪にアスカが助け舟を出した。
 パイを切ろうとしているアスカが握るナイフのおぼつかなさに、「あ、ええ、俺がやるから」と千雪はそのナイフを取り上げる。
「あ、俺やります、千雪さん」
「良太、お皿並べてんか」
「でも、テーブル乗っかりませんよ」
「じゃ、あたしみんなに配る」
 おぼつかなげに皿を持つアスカを見かねて、今度は京助が切り分けたパイを二つずつのせた皿を取り上げて、配って歩く。

 


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