今夜は千雪が京助と一緒にいるせいか、工藤と千雪の微妙な関係にやきもきしないで良太の胸中も比較的穏やかだ。
それより、肇のことの方が気がかりだった。
やたら沢村と笑い合っているかおりを見て、もし、かおりを沢村に取られてしまったら、とやたら気が気でないに違いない。
「すんごい、こんなゲーノージンばっか、それもすんごい美人ばっかで驚いちゃったわよ」
良太がかおりを呼ぶと、かおりは笑って肩をすくめる。
「あ、でも大丈夫、小林千雪があんな美人だったなんて、誰にも言わないから。あと、社長と山内ひとみができてるとか、オフレコってやつでしょ?」
「え、いや、社長とひとみさんは別に……」
否定しようとして、良太は言葉を飲み込んだ。
「マスコミにタレこんだりしないから大丈夫だって! でもカッコいいと思ったのになー、社長、残念!」
「え………………」
工藤を見て、ほうっとため息をつくかおりに、良太は一瞬言葉をうしなう。
「いや、そうじゃなくて、な、ここだけの話、沢村とは、その、どうなの?」
良太はコソっと小声で聞いてみる。
「やっだー、良太くんってば!」
バシ、とまた背中を叩かれる。
「大丈夫よ、大事な沢村くんを取ったりしないから」
「は?」
コソっと返したかおりの言葉に、良太は首を傾げる。
「だから、こないだ聞いちゃった、沢村くんに」
「何を?!」
それこそ何を言ったんだ、沢村は、と良太は沢村を振り返る。
「良太ちゃーん!」
俊一や小笠原らといい調子で焼酎を飲みかわしている沢村が手を振った。
「だから、俺が言いたいのは、その、実は肇のことなんだけど」
良太は意を決してかおりに言った。
「いいのよ、あーんな超鈍感男のことは!」
「え、かおりちゃん?」
かおりは返事をせずに、今度は鈴木さんや下柳の輪の中に割り込んだ。
首を傾げる良太は、かおりの台詞が気になった。
「なあ、どないなってんね?」
アスカをつかまえてこそっと聞いたのは、千雪だ。
「何が?」
アスカはパイを頬張ったまま振り返った。
「あの二人、工藤さんと山内ひとみ」
「どうにも。昔からの悪友みたいよ」
「良太とのことは?」
「知ってるわよ、彼女、良太を可愛がってるし」
「そうか」
千雪はなるほどとうなずいた。
「それより、工藤さんじゃない? 焦ってんの。ふふ、たまにはちょっと焦ってみればいいのよ」
アスカはちょいちょいと千雪を手招きする。
「何やね?」
「実はね、沢村くん、良太にご執心なのよ、私の見るところ」
アスカは千雪に耳打ちする。
「はあ? 面白がってんな、アスカさん」
千雪は片眉を顰めてアスカを見やる。
「だーって、面白いもーん」
何やら色々な思惑が入り混じった花の宴も、日が変わろうという頃には工藤からお開きの合図があった。
「もうこの辺にしておけよ」
カラオケや音楽で騒いだわけではないが、傍には大きなマンションもある。
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