後片づけは明日にしようということになり、最後までつきあってくれた鈴木さんと良太、それに真中らでとりあえずボトルやゴミと食器を集めて中に運んだ。
「そういえば、随分前にもお会いしたわね」
いきなり隣に立ったひとみに囁かれて千雪はやはり覚えていたかと思う。
「そうでしたか?」
千雪はしれっと答えた。
「良太は知ってるのかしら?」
「知ってますよ。良太は気にしてるみたいやから、俺のことなんか心配せんかてええて言うてるんですけど。俺も良太は可愛いですからね」
ひとみの含みのある問いかけに、どうやらひとみが工藤と良太のことを知っているらしいが、それをよく思っているのかどうかと訝った千雪は、断言するように言った。
「あらそ?」
ひとみはじっと千雪を見つめながらにっこり微笑んだ。
「千雪、とっとと帰るぞ」
ひとみと千雪のやり取りを遮るように、宴の中でひとり、人の思惑などに何の興味もなかった男が千雪を呼んだ。
「ほな、うるさいやつが呼んでますよって」
京助のあとをのっそりと追う千雪を見て、ひとみはあら、と思う。
「ねえ、アスカ、あの二人って……」
ひとみは通りかかったアスカを掴まえた。
「そ、見ての通りよ、横暴京助!」
最後に俊一がパーティ用の照明を外すと、桜が庭園灯の灯りの中でぼんやり浮かび上がった。
ふと工藤は足を止めた。
ようやく静かになったとため息をついているのか、花はひっそりと美しい。
そうだな、こんなきれいだったんだな。
工藤は憑き物が落ちたかのようにあらためて心の中で呟いた。
真中や須永の心配をよそに、俊一や小笠原はひとみや下柳らと二次会だと街へ繰り出し、明日もゲームがある沢村は肇やかおりと一緒にタクシーを拾った。
秋山はアスカと、京助は千雪と一緒にタクシーで去り、鈴木さんも暇を告げる。
「タクシー、経費で落とせますよ」
良太は声をかけたが、「大丈夫、酔い覚ましに歩くから電車で帰るわ」と鈴木さんは地下鉄へと向かった。
急にしんと静まり返ったフロアで、良太は空になったボトルを寄せていたが、「いいから、もう放っておけ」と工藤が呼んだ。
「はーい」
良太はエレベーターの扉を開いて待っている工藤の横に滑り込んだ。
「きれいでしたね、桜。工藤さん、何で嫌いなんですか?」
「嫌いってわけじゃない。なかなか、潔く咲いたな」
直球な良太の問いに工藤は苦笑した。
七階に着くと、「良太」と工藤が呼んだ。
「ネコに飯やったら、来いよ。飲みなおしだ」
良太が振り返ると、工藤がそう言って隣の部屋に消えた。
「はいー」
良太は笑い、慌てて自分の部屋のドアを開けた。
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