夢のつづき18

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    ACT 4

 
 部屋のドアを開けた途端、二匹の猫たちがわらわらと良太目掛けて飛んでくる。
「遅くなったねー、ごめんよー」
 足にまとわりつく猫たちに触れると、こわばっていた身体の力が抜ける。
 二匹とも待ってましたとばかりにご飯を平らげてしまう。
 その食べっぷりはいつみても可愛いものだ。
「そういや、俺もなんか腹減った」
 いろいろと思いが交錯して腹に詰まったような気分だったために、空腹なのを忘れていたらしい。
 スーツを脱ぎ棄てて、傍にあったジーンズとセーターに着替えると近くのコンビニに向かう。
 雨のせいでじっとりと湿気に包まれる。
 弁当を食べる気になれず、おにぎりを二つとビールを買って帰りしな、工藤と下柳がぼそぼそ話していたのを思い出し、何やら気になった。
「アイダが、とかって聞こえたけど」
 深刻そうな顔をしていた。
「アイダって相田企画のことじゃないよな」
 相田企画はやはり二人とは長いつきあいのイベント会社である。
 相田夫妻と五、六人のスタッフがいたはずだ。
「まさかまた猪野プロみたいなこと、ないよな」
 口にして、嫌な気分が渦巻いた。
 アイダは相田に違いないような気がした。
「仕事上のトラブルくらいならいいけど」
 もうあんなのはごめんだ。
 猪野の葬儀の時、子供たちの泣きはらした目を思い出すとやりきれない。
 おにぎりだけ食べてから風呂に入り、タオルで頭をゴシゴシ擦っている時、玄関のチャイムがたてつづけに何度か鳴った。
 真夜中に良太の玄関のチャイムを鳴らすような人間は、一人くらいしか心当たりがない。
「何時だと思ってんだよ、ジャンジャカ鳴らさなくても、鍵開けて入れば……うわ……」
 慌ててドアを開けると大きな影が良太に覆いかぶさり、二人して絨毯の上に倒れこんだ。
 びゅうと冷たい風が一緒に入ってきて、ようやくドアが閉まる。
「バカヤロ! 確認もしないでドアを開けるんじゃない…」
 工藤の怒鳴り声に驚いて、猫たちはさっと隠れてしまった。
「うう、酒臭っさ……えらく飲んでんな……」
 こんなに酒に呑まれた工藤をあまりみたことがない。
 コートが濡れていて、スウェットに染みて冷たくなってきた。
「おい、ちょ…工藤って、コート、脱げって、冷たい……」
 だが男は良太を押しつぶすようにのしかかり、動く気配がない。
「工藤って…」
 良太はあきらめた。
 こんな大きな男を持ち上げる力は出てこない。
 でも何か、やっぱりあったんだな、工藤。
「……くそ…俺は無力だ…」
「え……?」
 工藤が漏らした言葉に良太は驚いた。
 オレハムリョクダ…?
 確かにそう聞こえた。
「ちょっと…寝させろ」
 もぞもぞとまた工藤が言った。
「なーにがムリョクだよっ!! あんたがムリョクなら俺はどうすんだよっ!」
 天井を睨みつけながら、良太は喚く。
 答えはない。
 どうやら工藤は本気で寝てしまったらしい。
 おそらく睡眠時間もろくに取っていなかったに違いない。
 仕方ない。
 幸い絨毯はふかふかだし。
 ―――――戻ってきたから今夜は許してやるか。

 


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