大体、『プラグイン』にしたって、ちょっとくらい仕事がなくたって、どうにかなるような会社じゃないのだ。
代表の河崎にせよ藤堂にせよ、別に働かなくても十分暮らしていける身分である。
なのに、みんな仕事人間だから、仕事に対する姿勢は半端じゃないけれど。
しかし猪野のことを思い出すと、良太はまたため息が出る。
「なんだかなー」
「どうした? 深刻そうな顔してらしくないな」
「どうせ俺は能天気な面ですからね」
「うん、猪野さんのことか?」
「あたり、どうして?」
やはり藤堂は不思議な男だ。
「良太ちゃんは優しいからな。すぐわかるんだよ。ちょうどあの時、俺と浩輔ちゃんだけしかお葬式にも顔を出せなかったんだが、やりきれんねー」
「そうなんですよ。俺のうちも昔似たような状況だったんで、他人事じゃないっていうか。うちの両親は能天気なんで、何やっても生きていけますけどね」
うんうん、と藤堂は頷く。
「で、良太ちゃんとしては、製作会社やスタッフのみんなが猪野の二の舞にならないようにって、工藤さんが東奔西走して、オーバーワーク気味で忙しすぎるのが面白くないと」
「ええ、そ……」
そうだと言いそうになって、良太は思わず顔を赤らめる。
「いえ、だから、年やからだのことも考えてほしいと……」
「なるほど、寂しいよな、それは……」
「そういえば、藤堂さんに教えてもらったネットワーク、何とかうまく機能してますよ」
時々ドキッとすることを藤堂は言うので、良太は話題を変える。
「お陰で、工藤のフォロウもここにいてできるようにもなったし」
以前のネットワークをやめて、藤堂に指南してクラウドを活用したネットワークに切り替えたのだ。
どうしてもパソコンに弱い谷川以外は、どこにいても社員それぞれのパソコンからクラウドにアクセスし、プロジェクトごとにデータを放り込み、オフィスから良太がチェックし、進行状況を管理、確認しながら進めていく。
案件が成立すれば、鈴木さんが経理用のデータベースに追加する、というわけである。
工藤はここのところ小さなイベントからビッグプロジェクトまで片端から立ち上げてメインサーバに放り込み、いくつかまとめて自分で処理しているのだが、良太はその中からまだ進行途中の案件などを勝手に引き取り、スタッフや会場の手配やら細かい作業を処理していた。
「なるほど、さすが、良太ちゃん」
「なんか、藤堂さん、俺のことバカにしてない?」
「まさか」
「ほんとかなー」
「してたらわざわざ、ここにきたりしないよ。君は冷静に対処すれば何事も対処できる頭脳を持っている。ただちょっと、かっとなると直球勝負なところがあるから、抑えられればバッターアウトだが、打たれたら場外ホームラン、ってとこかな」
簡潔明瞭に自分の人となりを分析されて良太はうっと言葉に詰まる。
「やっぱ、俺、藤堂さん怖くなってきた。何でそんなにビシバシ俺のことわかるわけ?」
「だから冷静に分析すれば、そのくらいわかるってこと。君だってね。で、誰かに能天気な面してるとか、言われたの?」
またしても良太は驚かされる。
「ほらあ、何でそんなことわかるんですか」
呆れ顔で良太は藤堂を見た。
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