ACT 1
近年の日本のスポーツ界といえば、レベルの高い闘いが続くフィギュア、テニスの上坂の世界ランキングの動向が気になるところだ。
サッカー界では海外で活躍する選手の移籍問題が注目されている。
MLBでは大宮選手の活躍で持ち切りだが、プロ野球はと言えば三月も半ばを過ぎるとオープン戦も終盤、公式戦開幕も迫ってきた。
こういう時こそ、盛り上げていくのがマスコミの役目だよな。
意気込みだけは球界を背負って立つくらいのものがあるが、乃木坂にある青山プロダクションに籍を置く広瀬良太は、自分がプロデューサーとして名を連ねるスポーツ情報番組『パワスポ』以外にもまたぞろ飽和状態の仕事を抱えていた。
名刺の肩書にはプロデューサーなどとあるものの、万年人手不足の弱小プロダクションにあっては、社長秘書から運転手、雑用係と何でもこなさねばならないのは、この会社では当たり前なのである。
万年人手不足は、社長工藤高広の極めて非凡な出自がその理由となっているのだが、工藤高広といえば在京のキー局に籍を置いている頃から、工藤が動けばヒット間違いなしと言われるほど切れ者のプロデューサーとして名を馳せたものの、鬼の工藤という異名をとるくらい、どんな人気俳優であろうと見込みがないとわかれば非情に切るとしても有名で敵やライバルももちろん少なくはない。
その工藤が独立して興したこの青山プロダクションは、タレント数名、社員数名ながら業績だけは右肩上がりで、さらに万年人手不足を引き起こす要因となっている。
にしたって、沢村のヤツ、まだギアがはいんないのかよ、昨日も四タコってなんだよ、いつも調子は尻上がりによくなるはずなのに。
仕事に忙殺されながらも良太が少し気がかりなのは、リトルリーグからのライバルで悪友、今や押しも押されもせぬ球界屈指のスラッガーで昨年の三冠王、関西タイガースの沢村智弘のことだ。
学生時代騒がれ過ぎたせいでマスコミ嫌いになり、なかなかインタビューもさせてくれないクールガイとして通っている沢村だが、彼を知るものの前では時折ウザいくらい熱いところがある。
それはいいが、沢村はいつも自主トレからきっちり計算して公式戦に備えている。
最初は自分のその時の状況を踏まえながらあらゆる方法を試していくから、周りがあいつは調子が悪いなどと勝手に判断しても、マイペースで徐々に調子を上げていくだけなのだ。
しかし例年この辺りになれば、たまに柵越えの一つや二つはあっていいはずだが、今年はまだそんな手ごたえを沢村から感じない。
何か原因があるとしたら、アレしかないよな。
いやいやいやいや、ただの気のせい気のせい。
良太は思わず首を横に振る。
これ以上面倒ごとはゴメン被りたい。
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