ACT 4
良太が再び目が覚めた時は既に八時を回っていた。
毎度のパターンで、良太は工藤にしがみついて眠っていたらしい自分に赤面しながら慌ててベッドを降りると、チェストからパンツやシャツを出して慌てて身づくろいする。
「……まだ八時だぞ」
「撮影、小笠原の、フジタ自動車……九時、スタジオ……」
単語だけを並べて、猫たちの水入れの水を新しく取り換え、カラカラとカリカリを皿に入れ、五分でシャワーを浴び、顔を洗い、スーツを着て身支度を済ませると、コートとバッグを掴み「行ってきます」と扉が閉まるのと同時に部屋を飛び出した。
ドアが閉まる音に、ちぇ、と良太の口をついて出る。
工藤と過ごす時間なんて、いっつもこんなじゃん。
今朝がたエロパワー全開の工藤に乗せられて、滅茶乱れてしまった自分が一瞬頭を掠め、カーッと熱くなるが、それを振り払うようにジャガーのエンジンをかけた。
その頃、工藤はベッドに腰を降ろして、しばしハグハグと幸せそうな猫たちの朝ごはんのひと時を眺めていたが、徐に携帯を取り出すと、よく知った番号を呼び出した。
「俺だ、ちょっと調べてほしいことがある」
「何だ、お前のせいで俺の頭はどんどん薄くなる」
工藤は相手の苦情に苦笑いした。
良太がスタジオに着いたのは九時ギリギリだった。
「おはようございます」
あたふたと駆け込みそうになって、息を整えてから良太はドアを開けた。
「あ、良太、きたきた。珍しい、俺より遅いって」
マネージャの真中も小笠原の後ろからおはようございますと頭を下げた。
「色々、忙しかったんです」
言い訳をしながら、ちょっと赤くなりそうになって良太はまた一つ息を吐く。
生成りのシャツに黒のデニム、さすがに小笠原はもうそのままテレビの画像に入り込んだように決まっていた。
「良太ちゃん、おはよう」
良太が来たのに気付いて、クリエイターの佐々木がにっこりと近づいてくる。
「佐々木さん、おはようございます。よろしくお願いします」
相変わらず佐々木はクリエイターというには無駄に綺麗だが、仕事モードになると空気が変わり、代理店プラグインの河崎と何か話し始めた。
撮影はロケとスタジオで行われることになっているが、今回はスタジオでの撮影である。
恋人と別れて犬と一緒に車に乗って飛び出していくというストーリー第一譚と、大自然を走り抜ける車がやがて都会へと戻り、彼女の元に駆け寄っていくというストーリー第二譚が用意されている。
今回小笠原と共演するのは、シャープな美人で近年主演を含むドラマなどで活躍している人気女優古木洋子だ。
佐々木は今度はディレクターと顔を突き合わせて話し込んでいる。
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