好きだから20

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     Act 4
 
  
 

 昼にはまだ早かったが、十一時は過ぎていた。
「何だ、一体これは!」
 オフィスのドアが開くなり、入ってきた工藤高広は声を荒げ、持っていたスポーツ紙をテーブルに叩きつけた。
 堂々と一面を飾っているのは人気俳優中川アスカと関西タイガースの四番打者沢村智弘とが腕を組んでホテルへ入っていく写真だった。
「朝っぱらから怒鳴り散らすと、血圧が上がるわよ、若くないんだから」
 鬼の工藤と称された男の怒鳴声にも一向に怯むでもなく、早朝工藤から呼び出され、秋山とともにオフィスに現れたアスカは窓際のソファで優雅に紅茶をすすった。
「どうしてわざわざマスコミにネタを売るようなマネをした?」
「たまにはいいじゃない? 犯罪でもあるまいし、ちょっとは世間が中川アスカを思い出してくれるわ」
「あえてネタを提供したんです」
 露悪的なアスカの言葉を遮るように、常に冷静な面構えに難しい表情を浮かべた秋山が言った。
「売名的な手段をお前が使うとは思えないが」
「二人のせいじゃないです」
 キーボードの手を止めて、良太が立ち上がった。
「留守中何事もなかったと、昨夜お前は言った気がするが」
 工藤は振り返って良太を睨みつけた。
「私から話します。私たち事情を知っているみんなが協力したでっち上げなんです。沢村くんと、佐々木さんのために」
 良太が何か言う前に、秋山が切り出した。
「……佐々木さんの? どういうことだ?」
 一呼吸おいて工藤は聞き返した。
 秋山は工藤の怒りはもっともだと前置すると、沢村が自分の失態のせいで佐々木を巻き込むことを恐れて小田を頼ってきたことから、一計を案じて藤堂やプラグインまでを巻き込んでのハロウィンパーティについてまで、事の成り行きを説明した。
「CMのスポンサーやドラマ関係者にはあらかじめパーティの一環でマスコミが騒ぐかもしれないことは報告済みです」
 その時電話が鳴った。
「小田先生からです、良太ちゃんに」
 アスカや秋山が工藤に説明している間、黙って仕事をしていた鈴木さんが言った。
「はい、広瀬です」
 小田は昨夜のホテルまで沢村の周りをうろついていた男を監視をして得た事実を伝えてきた。
 沢村は報告は良太にと勝手に小田に頼んでいたのだ。
「はい、はい、……………そうですか、わかりました」
「何で小田がお前に伝えてくるんだ」
 良太が電話を置くとすかさず工藤が尋ねた。
「沢村が俺に報告するように依頼したんです」
 それから良太はふうと一つ大きく息をついてから続けた。
「沢村は話しても構わないってことなので、小田先生の話だと、沢村を嗅ぎまわっているのは沢村宗太郎の顧問弁護士、真岡久史事務所の息のかかった興信所の調査員のようです。昨夜もホテルの沢村の部屋と同じ階に部屋を取って沢村のことを監視していたみたいです」
「やっぱりね、プラン通りで正解じゃない」
 アスカは工藤が叩きつけた新聞を取って広げた。
「沢村っちの部屋に科捜研が入ったら、私の指紋があちこちに見つかるわよ、第一容疑者決定!」
「何だ、それは?」
 工藤がアスカをじろりと睨む。
「沢村っちの部屋で一時間くらい藤堂ちゃんとワイン飲んでおしゃべりしてから帰ったの。藤堂ちゃんはそのまま沢村っちの代わりに朝まであの部屋にいたけど」
 どーんとトップページに乗っている写真の記事に軽く目を走らせたアスカは、「やだ、なにこれ!」と声を上げた。

 


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