Winter Time11

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「俺が、お前と鴻池を天秤にかけるようなバカに見えるか?」
 工藤はそんなことを言っていたが。
 でも、俺と千雪さんは天秤にかけるんだよな、きっと、とついいじいじと考えてしまう。
 しかも今良太は、工藤には未だに反旗を翻したままだ。
 ちぇ、恋する男の子のハートは複雑なんだよ!
 チンピラのゲイかぁ。
 傍から見るとそんなもんさ、俺なんて。
 鴻池の科白がまだ尾を引いてやがる。
 チクショー、鴻池なんぞに負けるかよっ!
 案外、鴻池との関わりは良太のテンションを上げる手助けとなっているのだとは本人も気づいていなかった。
 ま、鴻池のことなんか置いといて、とにかく、久しぶりだしな、肇のやつとも。
 良太は鴻池の残像を振り払い、幼馴染の顔を思い浮かべた。
 昔の友達に会うのは嬉しいのだが、次の週末あたりじゃないと、サラリーマンの肇には時間もとれないらしい。
 今日は工藤に仕事先に車で送ってくれと言われているだけだが、良太も何かあればいつでも仕事に入れる体勢ではいるつもりだ。
 正月番組の撮影は、ナマ以外はとっくに終わっているから、アスカは今年はおとなしく実家に帰ったようだ。
 写真集の売れ行きは上々で、来年は彼女主演の映画も封切られる。
 まだ撮影が残っている奈々は、正月早々、いろんなバラエティ番組に駆り出されることになっている。
 来年はどうやらCDも出すことになりそうだ。
 工藤とJBSレコード社とのプロジェクトも着々と進み、今売り出し中の音楽プロデューサーを起用することが決まっている。
 嘉人は来年の大河ドラマで主役を演じているとあって年末年始も忙しい。
 そんな中で良太が気がかりなのはやはり工藤が常にもまして忙しいことだ。
 だって、いい年なんだしさ。
 無理ばっかして、人の言うことなんか聞きゃしない。
 お前とは鍛え方が違うとか言っちゃってさ。
 それに、工藤が忙しくしていればいるだけ、顔を合わせる機会も少なくなるわけで。
 その前に、やっぱこっちから歩み寄るしかないか~
 クリスマスイブなんて、そんなもん、工藤にはきっとまったく意味のない単語のひとつなんだろうな。
 炬燵に足を突っ込むなり、早速ナータンが膝の上に乗っかってくる。
「よしよし~、ここんとこ遊んでやれなくてごめんな~、ナータン~」
 良太が撫でてやると、わかっているというように、な~んと甘えた声で答え、すりすりする。
 何気なくテレビの画面に目をやれば、痛ましい災害の爪あとや未だに尾を引いているニューヨークテロ事件の映像などが流れていた。
 アメリカ同時多発テロ事件以来、どれほど厳重に警戒しているかもしれないにもかかわらず、世界各国でテロ事件は後を絶たない。
 ニューヨークのテロ事件については、工藤がプロデュースしている報道番組でも何度も取り上げている。
 テロ事件が起きた直後、ニューヨークにいた工藤と連絡が取れなくなった時、良太は生きた心地がしなかった。
 もしかして工藤がこの世から消えていたら、と思うと今でもぞっとする。
「まったくあのオヤジはよ~、俺がどんなに心配したかも知らないくせにさ!」
 ビールを飲み干して良太は一人息巻く。
 にしても何て言って歩み寄るかな…………
 下手をすると、このまま年を越すことになる可能性もある。
 良太にとってそれが当面の問題だった。
 

 


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