Winter Time17

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「おーい、まだか~? お前の部屋~ 大体水臭せーんだよな、幼馴染みの俺にくらい、連絡先教えとくもんだぜ、良太」
 肇が酔っ払いにありがちに大きな声を上げる。
「あ、ここ、ここ。やっとで着いた~、ナータン、たらいま~」
 酔ってはいたが何とか自分の会社には辿り着いたものの、エントランスあたりにくると、良太はもうそこがベッドの気分でへなへなと座り込む。
「こらこら、そんなとこで、寝ない、良太!」
 かおりが良太の腕を引っ張った。
「ここっておい、会社じゃん、これ」
 あたりを見回して、肇がふうと大きく息を吐く。
「そっ、会社。ここの七階が俺の部屋。社員寮なんだ~」
「すっげー!」
 肇がビルを見上げたその時、背後から、「うちに何か用か?」という声がした。
「あっれー、シャッチョーじゃないですか!」
「何だ、良太か」
 へべれけの男が良太と気づいた工藤が苦笑する。
「きゃー、この方が社長さん? ほんとにカッコいい! いつも良太がお世話になってますぅ」
 かおりがまた声を大にして、工藤にからむ。
「高校のクラスメイトだったか?」
「はい~、この人が野球部元キャッチャーで良太の女房役だった、飯島肇です~、んで、あたしは野球部の元マネージャーで、焼けボックイに今にも火がつきそうな、良太の元カノの水野かおり、で~す!」
 かおりが良太の代わりに手を高々と上げてそう答えたその瞬間、アルコールに浸されきった良太の頭でも、何かがやばい、という危険信号が点滅し始める。
 しかし、何がやばいか、ということが、イマイチきちんと伝達されていない。
「焼けボックイだ~? ばーか、どこにんなもんあるよ?」
 何だかわからないなりに良太は反論する。
「もう、良太ってば、部屋行くまで、ちゃんと歩いてよ」
 ふらふらと足元がおぼつかない良太を支えようとするかおりを、慌てて肇が支え直す。
「じゃあ、失礼します~」
 肇が挨拶すると、工藤はちょっと頷き、タクシーを停めると、「良太にあまりはめをはずさないように言っておいてくれ」と二人に告げ、後部座席に乗り込もうとした。
「あれ、シャチョー、どこ行くん…」
「高輪に帰る。明日の迎えはいいぞ。そんな状態じゃ、運転なんかできないだろう」
 良太の問いかけにそう言い置くと、工藤を乗せたタクシーはあっという間に走り去った。
 何か、やばい。
 良太の中で発せられる警告は、やがて睡魔に抗しきれずに途切れた。
 
  
 
 
 
 芳しい香りが漂い、明るい陽光が部屋に満ちている。
 コーヒー、飲みてー……。
 頭はまだちょっとジンジン痛いけれど、コーヒーを飲めばきっと体も頭もしゃきっとする。
 そうだ、起きなけりゃ、社長迎えに行かないと……。
「ねえ、ちょっと良太、猫のごはんはあげたんだけどさ、あたしたちもおなか空かない?」
 がばっと起き上がった良太の目の前に、コーヒーが差し出される。
 へ………………………………………?
 マグカップのコーヒーを無意識に一口すすり、しっかり化粧を済ませたかおりを呆然と見つめ、良太は事態を把握しようと試みた。
「何……で、かおりちゃん、ここに……?」

 


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