「良太、起きろ」
自分を呼ぶ声を良太は夢うつつに聞いていた。
「ったく、こんなことだろうと思った」
お開きになってから、長いつきあいのCM制作会社スタッフと「なんだ、今年は珍しくいるじゃないか」などと良太のようなことを言われながらちょっと飲み、気になって良太の部屋の前まできた工藤は、ドアを叩いても何の反応もないので、一旦は隣の自分の部屋に行ったものの、また引き返して合鍵で中を覗いた。
CMがオンエアになったせいで、あちこちから良太が好奇の目で見られているのが気になり、美聖堂の社長直々に誘われていたパーティの途中で、いつもセットで呼びつけられる山内ひとみに押し付けて会社に戻り、本来、パーティや宴会が嫌いな工藤だが、結局忘年会の手締めまで終えたのだ。
案の定、暖房もつけず、スーツも着たまま、良太は炬燵にもぐるようにして丸くなっている。
「……あっれー、シャチョー、まーたセクハラしてる~」
上着を脱がせていると、目を開けた良太がケラケラと笑う。
「セクハラしてほしいのか?」
工藤はニヤニヤ笑う。
「まーたオヤジなこと言ってるし~」
良太がとろんと焦点の合わない目を向けると、こちらも一杯機嫌の工藤はシャツも脱がせにかかる。
「ひゃっ…、シャチョー…くすぐってーってば」
笑いながら良太の喉元に手を這わせる工藤に、良太が小さく身じろいだ。
顎を掴んで引き寄せ、唇を重ね合わせると、良太は次第に応え始める。
「…わ…ちょ…工藤…さん、いつの間に入ってきた……」
どうやら覚醒した良太が、慌てて工藤の下から這い出そうとする。
「おとなしくしてろ。猫が起きるだろ」
「ちょ…、まだ心の準備が俺……」
後ろからシャツをはだけたままの体を抱き込むと、良太が喚く。
「今更準備もクソもあるか」
「ぎゃ……えっち…!」
ズボンを下ろされた良太は往生際も悪く触れてくる手から身を捩る。
「待っ……てってば…こんなとこで…やる気かよ」
「ベッド、ぶち壊したいのか?」
酔って思考能力が低下している頭でも、なるほど安物のパイプベッドでは、その上で大きな男に暴れられたらたまったものではないのはわかる。
「…………んっ!!」
わずかに抵抗してみるものの、与えられる快楽を素直に享受する身体はたやすく工藤に操られ、喘ぎながら良太は工藤の背中に腕を回した。
目を潤ませた甘ったるい表情は妙に艶めかしく、工藤の情を煽り立てるには十分だ。
酔っ払った良太は無防備にそんな表情を垣間見せることがある。
本人は気づいていないが女たちが近づきたがるわけだ。
業界の連中はCMやドラマから良太のそんなところを見抜いているのかもしれない。
「体中痛ぇ…………」
ボソリと、仰向けになったまま良太が呻いた。
半身を起こした工藤は脱ぎ捨てた上着を引き寄せ、ポケットから取り出したタバコに火をつける。
「何、さかってんですか…こんなとこで」
夢中で絨毯を掻き毟っていたのか、爪までも痛い。
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