まさか、また鴻池さんが何か後ろで糸引いてるんじゃないよな~
などと疑心暗鬼にもなるというものだ。
良太を誘拐かというようなまねをしてまで工藤に執着した鴻池だが、あんたがスポンサーを降りるというのならそれも仕方がない、と工藤にかっきり最後通牒を言い渡されて慌てて態度を翻したのだ、よもや小細工などはしないだろうと思うのだが。
何にせよ鴻池の弱点は工藤らしい、スポンサーを降りるどころかそのあと性懲りもなく工藤になんだかだとバックアップしたい旨の連絡を入れてきた。
工藤に見放されるのはイヤなのだ。
「厚顔無恥というか、唯我独尊というか…」
あんな目にあっておきながら、良太は鴻池のことは呆れて放っている。
しかし年が明ければアスカの主演する例のドラマもオンエアされる。
出来不出来は別としても、もしかしてちょこっと出演していた俺のことでまた電話が増えるかも……。
考えるとうんざりするだけなので、良太は頭を切り替えるべく、またテレビの画面に集中する。
「今日は工藤、帰れないかもな。フジタの社長につかまると長いから」
イブもせめて早く帰ってくればいいね、社長、などと、帰り際に秋山が言ってたことを思い出し、ふん、と思う。
「クリスマスイブだから何だってんだ。クリスチャンの祭が何の関係がある!」
一人で啖呵をきってみる。
ずっと野球少年やってきた割には、付き合ってた子と、良太もちょっぴりロマンチックなイブを過ごしたこともあったのだが。
「かおりちゃん、か~、何かメチャ久しぶりだよな~」
高校時代野球部のマネージャーをやっていた水野かおりとは、二年生の秋から付き合い始めたが、受験進学という季節の訪れとともにフェイドアウトした。
かおりは都内のお嬢様大学へ、良太は浪人して予備校に進んだが、かおりのことは以来ほとんど人づてに消息を聞くくらいだった。
ところが今回のCMのお陰で、良太は子供の頃からの友達から大学の野球部の連中までもの間でちょっとした有名人になっているらしいのだ。
家が保証人倒れして一家が離散してしまって以来、良太は、近所の幼馴染みの飯島肇ともずっと連絡を絶っていた。
リトルリーグから高校まで一緒に野球三昧したその飯島がどこで調べたのか、先日オフィスに電話をくれた。
良太は、例によってそのタレントはニューヨークに行ってしまいました云々で電話を切ろうとしたが、
「えっ、あいつ、ほんとに俳優やってんですか?」
という驚きの声には聞き覚えがあった。
「え……、お前、肇か!?」
飯島は良太がCMなどの事情をかいつまんで話すと、大いに笑い飛ばしてくれたあと、家のことがあったにせよ、幼馴染みの肇にまで連絡を怠ったと不義理を怒った。
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