雪の街1

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  ACT 1

 

 川口朔也が人気ロックグループ『GENKI』のメンバーと出合ったのは、CF制作発表が行われたホテルでのことだった。
 かたや俳優、かたやミュージシャンとしてお互い存在くらいは知っていたが、もっぱらライブ中心で活動し、最近特にTVにはあまり顔を出すことのないGENKIと朔也がすれ違うことさえ早々あるわけではない。
「GENKI、か。何か、誰かを思い出す名前だな~」
 ボソリ、と朔也が口にした。
「え、何が?」
 傍に寄り添うマネージャーの西本が聞き返す。
「あいつだっけ? ボーカルの一平って。真ん中のカッコつけてるでかいやつ」
「ああ、そうそう。かなり無愛想で有名だよ。ライブとかも機嫌が悪いとすっぽかしたり。誰かさんとどっこいどっこいの気まぐれ屋らしい」
「誰かって俺のことかよ」
 むっとして朔也は聞き返す。
「何か前の事務所から独立したって話で、最近はライブ中心で活動してるからあんまりTVとか出ないんだが、ここんとこ、珍しくTVの音楽番組に出たり、しかも気難しいリーダーの鈴木一平が、年末のNHK紅白の出演、OKしたって話題になってるよな」
 西本は朔也の不機嫌さを無視して説明した。
「へえ」
 特に興味をしめすわけでもなく朔也は適当な返事をした。
 世界に誇る自動車メーカー『藤田自動車』がアメリカやヨーロッパでも売り上げを伸ばしている高級車『アロウズ』。
 朔也は女優の長谷川美香とともにそのイメージキャラクターに起用された。
 朔也といえば、デビュー当時から喧嘩っ早いトラブルメーカー、或いは超クールな美貌で女優やモデルとの噂が絶えず話題を提供してきた。
 だが、それはそれ、俳優として人気、実力ともに揺るぎない地位を築きつつある。
 そのCM曲を担当するのがGENKIだった。
 この豪華な顔ぶれにTVの取材陣も殺到し、会場内は熱気とカメラのフラッシュで溢れ、ホテルの外にはどこからかぎつけたか、GENKIのファンが押しかけていた。
「くっそ、何とかしろよ、あの人ごみ」
 発表とインタビューが終わったところで、一平の声が朔也にも聞こえてくる。
「俺に言うな」
 そう切り返したのは、リーダーのくせに口が重い一平に代わり、スムースにインタビューに答えていた、マネージメントもこなすベース担当のみっちゃんこと古田光彦だ。
「未だに、人ごみとか、ごちゃついてるとこ、嫌いなんだよな、お前も元気も」
「元気っていや、一平、マジ、元気の店、強襲する気?」
 ドラマーが古田に尋ねた。
「やる気だな。そのために、一平のやつ、あの町でライブ決めたんだぞ、マサ。ライブのついでじゃなく、ライブがついでなんだ」
 ちょっと眉間に皺を寄せて古田は断言する。

 


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