Moon Light15

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   ACT 3
  

 
 九月も中旬を過ぎ、燦燦と降り注ぐ太陽の光がその威力を落とし始めた頃。
 ニューヨークテロ事件の余波もあってか、世情不安は募るばかりだ。
 加えてたまに連絡が入るくらいの工藤と良太はそれこそずっと冷戦状態である。
 良太はふうとため息をつく。
 手にしたコーヒーもすっかり冷めていた。
 そんな朝、珍しく小田がオフィスにやってきた。
「良太くん、長田プロがどうやら噂の発信源らしいことを突き止めたよ。雑誌社にコネタを売ったやつから辿ってな」
「ほんとですか? ありがとうございます」
 良太は思わず立ち上がる。
「工藤は出かけているのか?」
「はい…」
「そうか。ただ、もし起訴するとしても、もうひとつ決定的な証拠がないとな」
 そう言って帰っていった。
「そうだった」
 改めて良太は口にする。
 長田プロの件も片がついていないのだ。
「こういうのって、裁判でやり込められるのかしら? その長田って人、ちょっとは臭いメシでも食べていただかなくちゃ、気がすまないわよね」
 日頃温厚な鈴木さんも、時として過激な発言をすることがある。
 テロ事件以後、良太はそれが増えた気がしている。
「名誉毀損、信用毀損及び業務妨害」
 良太がボソッと言うと、鈴木さんが身を乗り出す。
「信用毀損? なあに? それってどんな罪になるの?」
「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する……だったかな。相手もきっと金に任せてやり手の弁護士立てるだろうし、臭いメシ食わせるほどにならないかもな~」
「なーんだ、そうなの」
 いかにもがっかりという顔で鈴木さんは、椅子に座りなおす。
「でも、いやだ、やっぱり良太ちゃんも法学部だったのよね、工藤さんのしかも後輩だったんだわね~」
 それを聞くとガックリ、と良太は肩を落とす。
「一夜漬けの暗記は割りと得意だったんだよな~。でも、俺なんか別に弁護士になれるわけでもなし、実社会に出たら、その程度覚えたって何にもなんないんだよな~。俺、ほんと野球しかやってこなかったもん」
 はーーっとまた大きくため息をついて、良太は大テーブルに突っ伏した。
 ほんとに俺、何やってきたんだろ。
「何、ゆってるの。いつも元気な良太ちゃんがいるお陰で、この会社も随分明るくなったのよ。さーさ、そろそろランチにしましょ。今日はお昼おごったげるわ。何がいい?」
 鈴木さんはいそいそと、一まとめにしてある出前のメニューを取り出した。
「え、ありがとうございますぅ!、じゃー天丼!」
「わかったわ」
 食欲の前には、何もかもがかすんでしまう。
 はずなのだが、今度ばかりは良太もかなり地の底にずぶずぶと落ちていったまま這い上がれそうになかった。

 


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