Moon Light20

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 千雪は着信履歴を調べ、鴻池がシャワーを終えるまでにできる限り自分の携帯に画像で保存すると、バスルームのガチャという音とともに携帯をポケットに滑り込ませた。
 ところが鴻池と入れ替わりにバスルームに行こうとした千雪の腕を取られてベッドに押し倒され、千雪は、ゲゲッと思う。
 思わず股間蹴りで突き飛ばしてやろうかと思った千雪だが、ここは冷静にことを運ばなくてはならないと、「俺もシャワー浴びたいんですけど」と鴻池の腕を押し戻す。
 そろそろ京助が現れる手はずになっているのだが、なかなか現れない。
「いいからいいから」
 などと妙に性急に鴻池が覆い被さってきたので、千雪はあちこち触ってくる手をやんわり退ける。
「君からいい香りがする」
 何、さかってんのや、このおっさん!!
 途端に背筋に悪寒を覚えた千雪は、こうなったら自力で逃げ出すしかないか、と身構えた矢先、やっとドンドンとドアを叩く音がした。
「何事だ」とあまりに煩い音に鴻池が仕方なく立ってドアを開けた。
 京助の唐突な出現に驚く鴻池に、「俺のモンに手を出すんじゃねえよ! このおっさんが!」とヘタな芝居をうち、いや殆ど芝居ではなく本心だったから、今にも殴り掛かりそうな京助を何とか押しとどめて、千雪は何とか部屋の外に連れ出した。
 京助の部屋へ戻った二人が、携帯の画像から鴻池の携帯にあったナンバーを調べていくと、工藤や良太の他に室井淳子、それに案の定、長田や阿部由治の名前が出てきた。
「決定打、とはいえへんけどな。さて、どないしょ?」
「とっちめて白状させるに決まってるだろ!」
「けど、なんていうんかな……あの人、印象として、さほどなんも隠そうともしていないように思うんやけど。携帯、ロックもデフォルトやったし」
「場合によっちゃ、警察に突き出してやる」
 あのやろう、と、ホテルのフロントで知人につかまって、千雪を助けるのに少々出遅れたこともあって、京助はなかなか怒りがおさまらないらしかった。
「とにかく、この阿部ってやつ、俺もう少し調べてみるし、京助、鴻池のオッサンの方、頼むわ」
「わかったよ」
 苦虫を噛み潰したような顔、というサンプルのような表情で、京助は頷いた。 
 
  
 
 いよいよ今日で終る。
 午後から最後のワンカットの撮影が入っていた。
 良太は萎えていく気力に活を入れて、スタジオに向うべく会社を出た。
 アスカと秋山とは現場で落ち合うことになっている。
 地下鉄の階段を降りようとしたところで、ポケットの携帯が鳴った。
「はい、あ……、鴻池さん、お疲れ様です…」
 鴻池という存在が何だか今は怖い。
 できるだけ早く携帯を切りたかった。
「え……?」
 振り返ると向かいの路肩に、黒塗りのベンツが停まっている。
「阿部くんも一緒なんだよ。送っていくよ、こっちにきなさい」
 有無を言わせぬものがある。
 鴻池一人だとちょっと怖い気がするが、阿部が一緒というのなら、と良太は道路を渡った。
 阿部が車を降りて待っていた。
 どうぞ、と促され、良太は鴻池の座る後部座席に乗り込んだ。
「お疲れ様」
 阿部が助手席に乗り込むとすぐ、車は発進した。
「コーヒーでもどうだね?」
 鴻池が阿部からポットを受け取り、紙コップに注いで、良太と阿部の二人に渡し、自分の分も注ぐと、どうぞ、と言う。

 


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