「だが、これで工藤も、お前みたいな薄汚いガキには愛想をつかすだろう。阿部とやっているところでも見せられればね。こう見えてもプロデューサーとしては一流だったんだよ。カメラもそうそうヘタじゃない」
鴻池の手にはハンディカメラが握られている。
「そんなことしなくても、工藤さんは俺なんか信頼しちゃいない! それよかあんたのこと絶対的に信じてる工藤さんを陥れるようなこと、何で!」
「工藤を陥れるわけじゃない、工藤にたかっている煩いハエをおってやろうとしただけだ。せっかくこの上ない才媛を与えてやろうとしたのに、ハエにばかり目を向けているからな。これで工藤も目が覚めるさ」
鴻池は確かに工藤の不利益になるようなことはしないのかも知れない。
だが、自分が気に入らない者を工藤が傍に置いていることが許せないのだ。
鴻池にとっては薄汚いガキ、即ちそれは良太の存在だ。
阿部が服を脱ぎ捨て、良太の上に圧し掛かる。
クソ……マジでやられるのかよぉ……
今度はまさか、工藤さんがきてくれるわけないし……。
あーあ、どうせ見捨てられたんだ、どうにでもなれ、だ、チクショ……
悔しくて悔しくて涙が流れ、良太が鼻水をすすったその時、激しくチャイムが鳴った。
まさか………!?
そんなスーパーマンみたいに現れるわけがないよな。
わらにもすがる思いの良太の耳に、インターホンから流れてきた声。
「工藤だ、開けろ!」
うそ!
「工藤さ………!!」
思い切り叫ぼうとした良太は、阿部に丸めたハンカチを口に押し込まれる。
「今、開ける」
鴻池はそう返事をすると、部屋を出て行った。
「よくここを覚えていたな」
横浜市の高級住宅地、広い敷地の中にアメリカ人が設計したその屋敷は、昔鴻池の父親が女を住まわせるのに使っていたものだ。
MBCに入社したての頃、工藤は鴻池に連れられてこの屋敷に何度か遊びにきたことがある。
恋人を失い、荒れていた頃だ。
鴻池とここに女を連れ込んで遊んだ。
今の工藤にとっては思い出したくもないクソ面白くもない過去のことだ。
「良太はどこだ?」
工藤はにこやかに出迎えた鴻池に答えもせず、問い詰める。
「良太? こんなとこにいるはずないだろう」
さらに二人の男が工藤の後ろから現れた。
「いい加減、観念した方がいいですよ。誘拐罪で訴えられますよ」
「やはり、お前ら、良太の仲間だったのか。小芝居に気づかなかったとは俺も落ちたもんだな」
鴻池は、そこに立っているのがホテルですったもんだした男と京助だと知って淡々と口にする。
「ずっとあんたを張ってたんだ、良太を無理に連れ込んだこともお見通しなんだよ」
京助が凄んで見せる。
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