Blue Moon13

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    ACT 2
 
  
 

 千雪と二人でこんな風に京都の街を歩いているなんて、予想だにしなかった。
「ええ天気やなぁ」
 白いシャツにワッシャージャケット、ジーンズにバスケットシューズ、そんないでたちの千雪に合わせるように、良太もジーンズのジャケットとボトムにスニーカーと、目いっぱいオフだぞ、と決めてみる。
 せっかく晴天なりだから、鴨川の川辺の朝を、千雪に誘われて散歩としゃれこんでいるわけだ。
 霧弥との打ち合わせは滞りなく終わった。
 良太の申し出を千雪は快く引き受けてくれた。
 霧弥が千雪に何を言うんだろうという良太の心配をよそに、霧弥は神妙に真剣に言葉を選んで話した。
 しかも音楽性の高い話や、小説の内容に対して良太よりもよほど掘り下げて確認をしているようだった。
 さらに画像の話から絵の話に話題が移る。
 いつの間に調べたんだろうというほど、霧弥は千雪や千雪の父である小林教授、母である日本画家原夏緒に関して詳細に知っていた。
 千雪に勧められた嵯峨野の料亭での食事のあと、これも千雪に確かめた静かなバーで三人、穏やかに言葉と酒を交わした。
 東京の住まいがオークラのプライベートルームだったからと、良太は京都も一泊くらいならとスイートルームを霧弥のためにとったのだが、バーを出てタクシーで送っていった良太に、イメージがわいたからもう一泊する、と言う。
 良太は、このやろおおお、と内心では思いつつも手配をしておくと答えた。
 霧弥には適当なホテルに泊まり、朝イチで東京に戻ると言ったのだが、実は千雪に誘われて千雪の家に行くことになっていた。
 千雪は金曜の夜から家に帰り、いつもは留守にしている家の電気や水道を使えるようにして良太を招いてくれた。
 京都に来る前に綾小路を訪ねたことを話すと、「紫紀さんはまあ、とりあえずはええ人やし」と千雪は言った。
 初釜から二度目の訪問となった綾小路の屋敷だが、今回招待されたのは紫紀と小夜子夫妻とその子供達が住む離れだ。
 明日にはパリ支社に発つという紫紀は京助とは違って一見フレンドリーで柔らかな物腰の人である。
 土産に散々悩んで、結局自分でも知っている有名なシャンパンと、お茶会の時に出た和菓子が美味しかったのを思い出して、日比谷の「やさか」で和菓子を買っていったら、小夜子に喜ばれたと良太は千雪に話した。
「領収書もらったら、店長らしきに人に工藤さんによろしくって言われました」
 すると千雪は笑い、「研二やろ? 俺の同級生や。そこ右いったとこに、親父さんの店がある」と教えてくれた。
 千雪と散歩に出かけて千雪の家に戻る道すがら「千雪坊」と声をかける近所の人々から、千雪がこの街で愛されて育ったのだということを感じた良太だった。
 思えば工藤に会わなければ、この千雪という人にも会うこともなかったんだな、としみじみ思うのだ。
 人とのつながりって、面白いなあ。
 その夜、良太は千雪と床を並べていろんなことを話しながらも、ふと工藤がいないことをひどく淋しく感じたが、いつしか眠りについた。

 


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