夏が来る22

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 ここは否と言うべきだろう、ただの同僚だと。
 まだ昼間で人目もあるのにとかわかっていながら、やっぱ浮かれてたのだ。
 だが、なぜ、父親は断言するかのように言うんだろう。
 瞬時に響はそんなことを考えていた。
「そうだよ」
 そして口から出たのは真逆の答えだった。
「井原と付き合ってる。あんたがそれを気に入らないというなら、いつでも出て行くから」
 響ははっきりとそう言うと、たったか中に入った。
「おい、響!」
 父親が外で呼んでいたが、響はそれを無視した。
 ペットゲートの向こうでにゃー助が鳴いた。
「ごめんな、遅くなって」
 抱きしめてしばらく撫でていたが、にゃー助はするりと床に降りて、響にを振り仰いで鳴く。
「ごはんだよな、今やるからな」
 父親のことは頭から追いやってにゃー助にごはんをやり、トイレを掃除しているうちに、ドアフォンが鳴ってレッスンの生徒が顔を覗かせた。
 二人のレッスンをみて、生徒が帰っていくと、七時を過ぎていた。
 一気に空腹感に襲われ、響は冷蔵庫を覗いた。
 土日の食事は断っているので、外で食事をしない時は、何か買ってくるか、自分で作れるものを食べている。
 造れると言ってもせいぜいレンチンかカップ麺程度のものだが。
 冷凍のグラタンを見つけてレンジに放り込み、ロールパンを皿に置いた。
 グラタンができると、缶ビールのプルトップを開けて喉を潤す。
 キッチンのテーブルで簡素な食事を終えてからコーヒーを淹れ、ソファでぼんやりしているとにゃー助が膝に乗っかってくる。
 にゃー助を撫でながら、響はうっちゃっていた問題を何とかしなければと携帯で井原を呼び出した。
「ご飯食べた?」
 コール一回で井原のテンションの高い声が聞こえ、響は苦笑する。
「今食べたとこ」
「レッスンは?」
「終わった」
 つと間があった。
「何かあった?」
 ほんとに、井原は響の声のトーンで響のその時の状況を把握するようだ。
「あった」
「え、どうしたの? 俺、そっち行こうか?」
 井原がそわそわとすぐにでも飛び出そうしているのが電話越しに伝わってくる。
「ひょっとしたら、お前んちにしばらく居候させてもらうかもしれない」
「もしかして、お父さんにバレたとか?」
 響は思わず笑った。
 ほんとに名探偵になれるぞ、井原。
「あれ、違った?」
「違ってない。お前と付き合ってるのかって聞かれたから、付き合ってるって答えた。気に入らないなら出て行くって」
 すると井原はしばし黙り込んだ。
「まさか響さんがお父さんにぶっちゃけるとは思わなかった」
「やっぱ、まずかったか?」
 井原も面倒なことになったと思っているのかも知れない。

 


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