「いや、そうなんだ。実は、そんな感じでだんだん話がなくなっちゃって、俺は世代の違いってか、俺も随分オヤジになったもんだと思ったんだが」
宇都宮はワインをグラスに注ぎきって、皿の肉を口に運ぶ。
そんな宇都宮を見ながら、ひどくきれいな所作だなと、良太は思う。
「彼女の場合、テリトリーを抜け出すことを考えないと、この先、彼女風な仕事しか来なくなるかも知れませんね」
すると宇都宮がさっきとは違う表情で良太を見つめた。
「なるほど、しがない俳優なんかやってるより確かなポジションなんだな」
「え?」
「しっかり人を見る目があるんだ、良太ちゃんには。だから工藤さんから一目置かれている」
「とんでもない! うちは弱小事務所で万年人手不足で俺なんか工藤にあれやれこれやれって押し付けられてやってるだけで、雷落とされるのなんか怖がってたら何もできないんで」
はははと良太は空笑いする。
「しかしあの工藤さんが、できない人間にやらせるとか、ないでしょ」
「あの人は俺の性格利用して、とりあえず丸投げするんです。できなきゃ使えねぇやつはうちにはいらんとかなんとか脅すってパターン」
良太は工藤の苦虫を噛んだような顔を思い浮かべて眉を顰める。
「それにちゃんと応えてるんだろ? 現に今回のドラマ、出だしからハチャメチャみたいじゃないか。それをキャスティングをはじめ何とか今日形にできたのは、良太ちゃんの手腕てことだ」
「形にできたって、まだ始まってもいないじゃないですか。キャスティングだって、俺が思い付きで口にしただけで、ほんといいのかって。局側のプロデューサもなんかほんとこっち丸投げみたいなのに、そのまた丸投げで俺、責任なんか取れないっすよ」
それを聞くと、宇都宮も苦笑する。
「まあね、何かずっと前に決まってた脚本家があと一年ってとこでバンザイしちゃって、焦りまくったプロデューサが必至で坂口さんに頼み込んだってからな」
「はあ、何か病気が再発したとかって」
「表向きはね。花嶋さんって、何かって言うと、ウツが出てとかって逃げちゃうんだ」
「え? じゃ病気って」
「まあ、逃げちゃうとこがウツといえばそうなのかもしれないが、煮詰まっただけだろ。俺も一度あの人のドラマやらせてもらったことがあるけど、今撮影って時にやっと脚本ってあったしな」
のんびりとした口調で宇都宮は言った。
「でも、サブの脚本家もいたんですよね? 大事な記念番組なんだし」
「ここだけの話、サブも二人ほど頼んでたんだけど、話がお話にもならなかったって。坂口さん情報だから割と信ぴょう性はある。あの人、人の口割らせるのうまいし」
「はあ………ますます、魑魅魍魎………」
「まったくだ。脅すわけじゃないけど、常識通じないし、無理難題ばっかだし、突然喚きだすし、理解不能な連中ばっか。俺も、その一人」
その時、ようやく良太は宇都宮のワインが無くなっていたのに気づいた。
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