「宇都宮さんの方が大変ですよね、うっかり普通につきあうこともできないんじゃないですか?」
「まあねー、でもいい加減この年だよ? もっと若いアイドルにターゲットを移してもらいたいよ」
ふっと笑いながら、宇都宮はワインを空けた。
さらっと前髪の落ちる髪型も胡散臭くないし、おそらくジムにも通っているに違いない細マッチョな体形にしろ、工藤と変わらない身長だから一九〇近いだろうし、とにかく甘めな造りのいい顔立ちは若い頃よりもそれこそ深みが出て、今非常にいいバランスなのではないだろうか。
いい男は何をしても絵になるんだな、と良太は改めて思う。
「オンとオフを切り替える人もいるじゃないですか。宇都宮さんてあまりそういうのない感じですよね」
「え? めんどくさいじゃんね。そういうの。カッコ付けできないたちだし」
「いや十分、いるだけでカッコいいです」
宇都宮はじっと良太を見つめて笑う。
その瞳の色が不思議に変化している気がする。
「いいなーそれ、良太ちゃんにそういわれると嬉しいよ。ウソのない人だから」
「え、いや、そんなことは……」
一瞬宇都宮の瞳にロックオンされたような気がして、良太は慌てて視線を逸らす。
「なんか、かあわいいなー、良太ちゃん」
そんなことを簡単に口にする宇都宮を見て、良太はじわじわと頬が熱くなってくる。
「いや、俺、かわいいっつう歳でもないっすから……」
とりあえず目の前の料理をガツガツと口に運び、カクテルを飲んで、ちょっと落ち着こう、良太は自分に言い聞かせた。
「さすがにさ、どこかに内通者がいたとしても、今のところ女に振られたばっかだから、男二人でいたって、まさか良太ちゃんのこと口説いてるとかは思わないよね」
じっと良太をその視線でフォーカスしたように、ほほ笑んでいる宇都宮の瞳は今ひどく妖し気な色を湛えている。
「……ひぇ?」
口いっぱい頬張ったまま変な声を出した良太は、またぞろロックオンされたように固まった。
ただドクドクと宇都宮に聞こえるのではないかと思うくらい心臓が大きな音を立てている。
冗談、だよな?
汗までにじみ出てきそうだ。
ややあってやっと良太は口の中のものを咀嚼して飲み込んだ。
「そ、そりゃ、振られたばかりとかじゃなくても、誰だってそんなこと思うわけないじゃないですか。って、振られたんですか?」
「振られるだろ、やっぱ世代の違いってか、俺の場合は、話についていけなかったから、無理だったんだろ」
やっとフォーカスを外した感じで、宇都宮がワインを飲み干す。
「やっぱ、傷つきますよね、そういうのって」
「うーん、まあ、多少は。でもやっぱりってのがあったしな」
「尾花沢さんからのアプローチでしょ? 彼女、可愛いし誰とでも打ち解ける風な感じだし」
「そう、何となく、ごはん行こうかみたいな……あれ、良太ちゃん、詳しいね、彼女のこと」
宇都宮が笑いながら良太を見た。
「前に、奈々ちゃんの出てるドラマで、ちょっと一緒に会ったことがあって。ただ、あとになって、奈々ちゃんが何気に、彼女ってふわっとしてて誰でも好感持てるタイプだけど、少し話すようになると、自分の好きなテリトリー内じゃないと話せないみたいって」
良太は口にしてしまってから、「あ、すみません、勝手なこと」と慌てた。
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