鬼の夏休み3

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「良太ちゃん、猫ちゃんたちは任せて。今夜からだったら、いろいろ準備もあるでしょ?」
 鈴木さんが良太を労わって、早速いつものように猫の世話を申し出てくれた。
「はい、すみません、いつも。お願いします」
 良太はぺこりと鈴木さんに頭を下げると、すぐに自分のパソコンに向かって、明日明後日のスケジュールの変更をどうするか、脳みそを総動員にすることになった。
「申し訳ございません、スポンサーから急な変更がございまして、スケジュールを見直させていただきたいのですが」
 結局、入っていた打ち合わせなどを別の日に変更してもらうようにリスケをお願いしたり、急ぎやっておかなければならない書類に取り掛かった。
 ただ、運のいいことにここ二日ほどの良太のスケジュールは、打ち合わせにしても移動可能な相手だったりで、快く了解してくれた。
 まさか、工藤、そこまで読んでた、なんてことはないよな?
 工藤の横暴にまだ腹を立てつつも、軽井沢、は涼しいかも、と、げんきんな自分のことは棚に上げておく良太だった。
 七時過ぎに工藤の運転するベンツは乃木坂を出た。
「え、こっちなら俺運転しますけど」
 良太は普段使っているジャガーをさして言ったが、俺が運転する、と工藤が言うので、良太は必要なものをとりあえず放り込んだバッグを一つトランクに入れると、助手席に座った。
 慌ててスケジュールを調整してから、自分の部屋に上がり、猫たちのトイレを掃除し、ご飯を用意し、ざっとシャワーを浴びると、とりあえずスーツを着た。
 軽井沢に行くと言われたものの、どういう用事でを聞く前に工藤はオフィスを出てしまったので、バッグにはタブレットや着替を入れている。
 軽井沢にある工藤の別荘には、良太がノートパソコンを一台置いているので、いざとなれば仕事もそこでできる。
「それで、何か急な仕事が入ったんですか?」
 高速に入る前に渋滞にかかって車が停まった状態になると、良太は聞いた。
 先ほど電話で相手を怒鳴り散らしていた件とは別の物だろうとは良太もわかる。
「綾小路さんに呼ばれている」
 車が動かないのをイラつきながら、ハンドルを握る工藤は答えた。
 良太が設定したナビが一キロほどの渋滞があるなどと言うから、余計に工藤は眉根の皴を深めている。
「え? 東洋商事がらみ?」
「まあな」
「呼ばれているってことは、あのスキー合宿やったでかい別荘?」
 すると工藤は鼻で笑う。
「そうだ。その、スキー合宿やったでかい別荘に呼ばれてる」
 ちぇ、そういう人を見下してバカにするから、いろいろ言われるんだろうが。
「あ、平造さんに連絡入れました?」
 良太は話題をするりと変える。
「さっきな。平造は明日から、前々から行けって言っていた人間ドッグだ」
「あ、そうなんだ」
 ふーん、平さんいないのか。
 じゃあ、明日の朝ごはんはなしか。
 平さんの美味しいご飯だけが楽しみだったのにな。
 和食も味噌汁が美味いし、パンなら平造お手製のジャムが絶品だ。
 あっ、でも杉田さんがまた代わりに来てくれるとか?
 杉田は工藤の曽祖父母の代から懇意にしており、工藤の幼い頃からを知っている家政婦だ。
 何かの時には近くに住む杉田に応援を頼むことがあるが、工藤を、ぼっちゃん、と呼ぶ元気な七十がらみの女性である。
 どうやら、工藤は年上の世話好きな女性には弱いらしく、杉田に小言を言われても怒鳴ったり言い返したりはできないようだ。
 ま、杉田さんもいなければ、コンビニで何か買ってくればいんだし。


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