夏を抱きしめて17

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 いや、意を決するほどのこともないはずなのだが。
 時間は午後九時。
 仕事かもしれないが、それなら留守電にメッセージだけでも入れておこう。
 元気は豪の番号を呼び出し、ボタンを押す。
 コール音が三回ほどした時、つい元気は切ってしまう。
「俺、何やってんだ……たかが電話するくらいで……」
 再びコールする。
 そして三回ほどコールした後、声が聞こえた。
『はい、ご用件はなんでしょう?』
 一瞬、さーっと血の気が引いていく気がした。
『もしもし?』
 元気は再び電話を切ると、すぐに電源をオフにしてしまう。
 明らかに女の声だった。
 どうやら、想像した通りにことが運んでいるらしい。
 からだが動かない。
 足が一歩も前に進まない。
 思わず夜空を見上げて、大きく息をつく。
 頭上にある満月が妙に明るい。
 何だか笑えてしまう。
 東京の月って、こんな明るかったっけ?

 


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