「やつら勝手に来やがったんだ、ほっとけばいい。あの速水ってやつは大学の同僚で、昔からの悪友なんだが、俺がお前らと温泉に行くとかってつい口を滑らせたもんだから、面白がってダチの理香とかまで連れてきやがって」
「ほんまや! ったく速水さんなんか、人をからかうことしか頭にない不埒もんや」
憤慨する京助に続いて千雪が吐き出すように言う。
「何や、千雪まで、なんぞあったんか?」
研二は少し心配そうに聞いた。
「三田村に聞いたらええ。いっぺん、桐島とかと一緒になってからかい返ししたったら、以来、何かにつけて仕返ししとうてしょうがないんや」
「お前、またきっつい仕返ししたったんやないやろな?」
千雪は研二を上目遣いに見やる。
「お前、どっちの味方やねん」
研二は答えずに苦笑する。
京助はそんな二人のやり取りをさりげなく見てから、ボトルの茶を飲み干し、ボトル入れに捨てた。
ずっとそんな風に千雪が研二と接することを、京助は警戒していた。
そうやって千雪が研二のところに戻っていくことを恐れていた。
だが、江美子というかすがいが唐突に消えた今、千雪が心を壊しかねないような気がした。
それは研二にしてもやはり堪えているだろうことは明白だった。
地元の同級生ら、三田村や辻ですら、突然仲間が消えるということは受け入れがたいものだろう。
いざとなったら千雪以外は塵に等しい。
それが京助だ。
だが、千雪の大切な仲間を放っておくことができない、それもまた京助なのだ。
茶屋でみんなでそばを食べ、帰り道をまた歩く。
帰りは、来る時とはまた違った風景が現れ、まさしく下界を忘れて大の男たちも自然に癒されたようだ。
吹き抜ける風やせせらぎの音、清らかな水、鳥のさえずり、千雪は何もかもが新鮮で、何もかもが仲間と一緒で、心の奥にあった深い亀裂が少しばかり癒えたような気がした。
同時に、京助という人間を見損なっていた気がして、京助に対してさらに申し訳なくも思うのだった。
本当に人のことを思いやれる人間なのだと、そんな京助が自分のようなものの世話を焼いているだけでいいのかと、また、あらためて痛切に感じた。
同時に、こうして研二とまた子供の頃のように一緒にいられることがひどく嬉しかった。
研二は、どうなんやろ。
真由子さんと別れて、子供らとも別れることになって、傷ついていないわけがない。
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