心療内科に連れて行くと、産後ウツや言われただけで、結局何も解決することもできないまま、二人目の妊娠がわかったのはもう、六カ月目に入る頃で。
抱きしめとってもあかんかった。
どころか俺が抱きしめることが真由子を苦しめとった。
研一を連れて実家に帰ると言うてきた真由子に、俺はほっとした。
情けないことに俺にはどうしようものうて。
少しでも真由子の心に負担がかからんのならと送り出した。
今も俺の心の奥に潜んどる千雪への思いが、真由子から笑顔を奪ってもうた。
親父やオフクロ、それにみんなの後押しがあったんもあるけど、俺も心機一転、仕事に打ち込める思て東京に出てきた矢先、今度は江美子や。
ほんまに、俺は情けないだけの男や。
あないな昔のことで千雪を傷つけるつもりはなかったんや。
研二は自戒しつつ首を横に振った。
自分の世界に入り込んでいた研二は、背中をバシンと叩かれて顔を上げた。
「情けない顔、しいなや! 歌うで!」
辻と三田村が、カラオケセットまで研二を引っ張っていくと、辻が入れた曲は、大演歌だ。
「~あなた~かわりはあ~ないでえすかあ~~」
野太い声で演歌をロック調でがなる辻に皆がどっと沸いた。
これには、ぶーたれているつもりだった千雪も苦笑せざるを得ない。
三田村が辻と一緒になって演歌を唸り始めると皆が大騒ぎだ。
「辻ぃ! 三田村ぁ! クール!」
アスカが叫ぶ。
「やっぱ可愛いわああ! 旬な男の子たち!」
理香までが女子高生のように投げキッスを送る。
大演歌が終わると、三田村に呼ばれたアスカが一緒に定番のデュエット曲を歌う。
千雪が何となく自棄気味にシャンパンをぐいぐい空けて、ケラケラ笑っているのを見て、京助は研二と何かあったような気がした。
研二がカラオケステージから戻ると、京助が声をかけた。
「ちょと顔貸せ」
一瞬、研二は硬い表情をしたが、黙って京助について部屋を出た。
千雪は酔いもあって、それには気づかず、佐久間と一緒になってアスカと三田村に声援を送っていた。
リビングの暖炉はまだ赤々と火が燃えていて、窓の外の寒さを遮断していた。
カラオケをやっている部屋は、元々ピアノが置いてあり、防音対策も多少施していあるから、音は聞こえてはくるが騒音というほどでもなく、この辺りは静まりかえっている。
「お前、何で別れたんだ?」
前置きも何もなく、京助は切り込んだ。
back next top Novels>
