研二は佐久間の横でゴクゴクとグラスを空けている千雪に目をやった。
「先輩、アニメソングなんか知ったはりましたん?」
「当たり前や。ガキの頃はよう見とったわ。今のアニメは知らん」
「進撃ライダーV3は?」
「袴田剛やろ、新聞記者が変身がつぼった」
「やっぱ、それ!」
千雪は研二らの方を見ようともせず、佐久間とアニメ談議をしている。
研二はふうとため息をついた。
「けど、俺はもうずっとあの頃にまだおるねん………」
そんな言葉を千雪から聞くとは考えてもいなかった。
江美子のことがそんな風に千雪に思わせたのかと、研二は千雪のことを心配した。
『いつもあなたが小林さんの傍にいるから、近づかれへん!』
勝手に千雪を護っていたつもりが、実は千雪を独占していただけなのだと、あの日少女に言われた一言で気がついた。
このまま行ったら自分は江美子からも千雪を遠ざけてしまう。
断腸の思いで志望校変更を決意したことを千雪には告げなかった。
だが、まさか別の誰かが千雪をさらっていくとは思いもよらなった。
それでも今は、千雪が幸せであればいいと、そう…………。
手にもったグラスが汗をかいているのに気づいて、研二はぬるくなったシャンパンを飲み干した。
ほんまはお前と、ずっと一緒にいたかったんや。
せえけど、いまさらや。
お前にも俺にも、あれから何年もが積み重なっとる。
金沢の大学で出会うた真由子は、強面やし、ダチも作らずに一人でおった俺に初めて近づいてきた子やった。
明るい、俺とは対照的に前へ前へと進もうとする性格やった。
つきあうつもりはあれへんかったけど、いきなり両親に、既成事実ができとるからとか言いよって。
研二さんのこと絶対離したくないと思ったの。
あなたと一緒ならどこにでも行く覚悟はあるわ。
巻き込んだのは俺や。
あんな明るかった真由子から笑顔を奪ってもうたんは、俺や。
あなたの心には絶対誰かが住んでいる。
そんなことを言い出したんはいつ頃やったか。
それから俺の携帯探ってみよったり、俺の昔の写真やらを食い入るように見ていたり。
産後の不安定な精神状態からくるんやないかって、病院では言われたりしたけど。
親父やおふくろにまで、俺の昔の彼女のことを教えてくれやなんて言いだしたり、果ては江美子や菊子にまで、ほんまは俺とつきおうとるんやないかなんて問い詰めたり。
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