春の夢53

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 アレクセイもその男の顔は覚えていた。
「ヒューか?」
「あんた…が、何で?」
 ヒューは構えてアレクセイを睨み付ける。
「ポールから連絡を受けた。ロジァはどこだ?」
 アレクセイはヒューの横を擦り抜け、奥の部屋に入った。
 そこは寝室で、ロジァはベッドに凭れて床に横たわっていた。
 腕が血に染まっている。
「ロジァ!」
 アレクセイは急いでロジァに駆け寄った。
 ヒューがやったのだろう、バンダナで上腕部を締め付けてある。
 アレクセイはベッドのシーツを引き千切ると、ロジァの腕のシャツを破り、取り敢えず傷の状態を見てから改めて止血した。
 ロジァは荒く息をつきながら、アレクセイを認めた。
「何で……てめーが……来るんだよ…」
「しゃべるんじゃない」
 アレクセイは他の怪我も見た。
 あちこち打撲があり、ひどく擦り剥いて、頭にも怪我をしている。
 アレクセイはロジァの怪我の応急処置が終わると、ヒューを振り返った。
「お前もみせてみろ」
 無理遣り床に座らせ、ジーンズを破った。
 ひどい出血だった。
 自分でジーンズの上からベルトで縛り付けていたが、血は完全に止まってはいない。
 アレクセイは引き契ったシーツできつく太股の上を縛り付けた。
「状況を話してくれ。それによって、どこに応援を頼むか決めなけりゃならない」
 アレクセイはヒューに問いただした。
「俺はバイクでロジァを拉致した車を追ってった。脚はそん時撃たれた。相手はサイレンサーを使ってた。俺は車にバイクを体当たりさせて、そしたらロジァが車から自分で転がり落ちたんだ。車はすぐに止まって男が五人降りた。俺はロジァを拾い上げてバイクで突っ走り、なんとか逃げたんだが、撃たれた脚が木偶の坊になっちまって、仕方なくここに転がり込んだ。奴らは追っ掛けてきた。多分、まだその辺に潜んでる。俺達が警察なんかにお世話になれねーことを知ってやがって。血の跡でじきここも突き止められるかも知れねー」
 ヒューはしっかりとした口調で説明した。

 


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