「ところが、ピットにお前を見たとき、俺はいきなり正気に返った。いきなり恐くなった…死ぬのが…お前に会えなくなるのが嫌だと…思ったんだ…」
「調子のいいこと…ぬかすな…! あの、ハンスってやろうともよろしくやってたくせに!」
恐ろしくきれいな男の目が少し眇められるのを、ロジァは見つめた。
「…ケンに聞いたのか? ハンスは大事な友人だが、俺の愛しているのはここにいる暴れん坊の王子様さ…」
アレクセイの指は優しくロジァの首筋をまさぐる。
「俺が…ガキだと思って、どうにでもなると思って…」
「あのな、俺が悩んでたのは、ガキのお前に深入りすると、どうしようもなくなるってことだったんだ…だから、局長の叱責覚悟でレースに出た。だが、結局、俺は深入りしたかったんだ…お前をもう離したくないって…」
「ウソつけ…」
またロジァの瞳から涙が落ちる。
「…愛してるんだ…」
アレクセイはロジァの瞼にやさしく唇をあてた。
「死ぬ時は、お前に腕に抱かれて死にたいよ…」
やっと見付けた俺の帰るべき所。
「…あんたの…」
ロジァの唇が動く。
「…マシンが燃え上がった時、死んだかと思ったんだぞ…」
アレクセイの耳にロジァの言葉は暖かく響く。
「こないだだって…俺を…ヒューに押しつけて行っちまったくせに…ここでくたばっても…なんて言いやがったくせに…俺が、どんな思いで…いたか知りもしないくせに…バッキャロ…!!」
重なった肌から互いの体温を感じ取る。
「ロジァ…悪かったよ…」
身体が繋がってしまうと、ロジァの頭の中はさらに沸騰しそうになる。
俺が…ずっと…あんたのこと、好きだって…知ってるくせ…
心の中の叫びすら、この男の目に晒されているようだ。
「ロジァ……すんげ……熱い……お前ん中……」
耳元で囁くアレクセイの声が甘い旋律のように、ロジァの身体の中を駆け巡る。
「……っ…! バッキャロ…!」
ロジァの言葉はアレクセイの唇に飲み込まれる。
色を帯びた眼差しがロジァを射る。
この美しい獣に喰われることを、ロジァの身体はひどく悦んでしまう。
長いプラチナブロンドがロジァを覆う。
「ああっ………」
声を上げてロジァは片方の腕でアレクセイにしがみついた。
アレクセイはそんなロジァを力の限り抱き締める。
こんな可愛い王子に捕まるとは思わなかった。
春もたけなわ、ロジァの腕が治ったら、今度はどこにキャンプに行こうか、ああ、きっとどこに行っても、楽しいに違いない。
アレクセイの思いは春の宵を駆け巡った。
THE END
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