シャワーを浴びたアレクセイがリビングに戻ってみると、ロジァは傷のある腕を上にしてソファに横たわっていた。
「こら、カゼ引くぞ…」
アレクセイの指がロジァの髪を撫でる。
といきなり身体がフワリと宙に浮いてロジァは驚いて目を開けた。
アレクセイが抱き上げたのである。
「何すんだよ!」
「気難しやの王子さまをベッドにお運びするのさ」
アレクセイは笑っている。
「腕、怪我してんだぞ!!」
「だったら、暴れるなよ、痛いだろ?」
「人を、ガキ扱いしやがって!!」
「そりゃ、可愛いからさ」
「ふざけたことぬかすな!! 勝手なことバッカ言いやがって」
シーツの上に降ろされたロジァは喚き散らす。
「そういや、俺達、ベッカーの公認だぜ」
猫のように喚いて威嚇するロジァの横に入って、アレクセイはシーツを肩まで引き上げる。
「なんだよ? そりゃ」
「ベッカーは俺達の関係を知ってるが、局長には話してないそうだ」
「な……!!」
ロジァは言葉がない。
「何が恐い、って、俺は局長に知られるのが一番恐ろしかったんだ」
「フン、てめーのクビが飛ぶってこと分かってんのか?」
抱きすくめられながらもロジァは強気な台詞を吐く。
「だから、お前が言わない限り、俺のクビはきっと安心だ。お前はまさか、言いやしないだろ?」
「いつでも言ってやる!!」
「ウソついてもすぐわかる。俺と離れたくないくせに」
「誰がだ!!」
「俺にかかったら、誰でもそうなる」
アレクセイは笑う。
ロジァは唇を噛む。
やっぱり、そうだ……誰にでもそうなんだ…
胸が痛い…
「でも、俺が好きだろ? ロジァ」
「誰がだよ!! てめーはただのボディガードだろ?」
ロジァは思い切り言い放った。
アレクセイはそんなロジァの顔を覗き込む。
ロジァはその目をそらせなかった。
「そうか、それでもいいさ…」
やがてぼそりとアレクセイが言った。
美しい顔が近づき、ゆっくりキスで唇がふさがれる。
自然に瞼が閉じられる。
途端、あっという間もなく涙がロジァの頬を伝って落ちた。
「……あの時、レースで……俺は自棄になって、バカな賭けをしてたんだ」
優しくキスを繰り返しながらアレクセイは呟くようにロジァの耳元で語る。
「ルシアン・ルーレットだ…エンジンが最後までもてば、ニューヨークに戻る、持たなければ、戻らないんじゃなくあの世だな……なんてな…」
ロジァはまた胸が痛くなる。
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