「おとなしいな? 俺にどうやって愛の告白しようかって考えてるとか?」
一気にワインがロジァの身体全体を巡り、頭の天辺まで赤くした。
「てめーは、そうやって一生自惚れてるがいいぜ!!」
だが、アレクセイはロジァの言葉を聞かない振りをする。
「そうだ、さっきの追加、俺は名コックだから、いつでも美味いもん食わしてやれるぞ」
確かにボルシチは美味い。
ワインもまた。
人間なんて情けねーよな、こんな時にも食うことは忘れやしない。
俺なんか、軍だろうが東側だろうが、掴まったら、どんな拷問がつらいって、メシ抜かされるって言われたら、何でもしゃべるし、やりそうだ。
ロジァは思う。
「美味いだろ?」
アレクセイが聞いた。
「うめーよ…」
ロジァは答えた。
「素直じゃないか」
アレクセイは笑う。
ロジァはアレクセイを睨む。
「レース、見にきてくれたんだろ?」
ふいに言われてロジァは、言葉を探す。
「…あれは、ケンが無理遣り連れてっただけだ」
「そうか…」
アレクセイは後片付けを始めたが、
「シャワー、一人で浴びられるか? 俺が手伝ってやろうか?」
とロジァに聞いた。
「一人で浴びられらあ!! んなもん!!」
ロジァはつい、そう言ってしまってから、はたと思う。
これじゃ、まるで泊まっていくと言ったようなものじゃないか。
しかし、バスタオルを放られて、ロジァは言うべき科白が無い。
ロジァがシャワーを浴びて出てくるのを待っていたように、アレクセイは、黙ってロジァの腕の包帯を取り替えた。
「無茶すんなよ…」
ボツリとアレクセイは言った。
俺が、Dr.Cって分かったから? それで優しくするわけ?
ロジァは出かかった言葉を飲み込んだ。
ヒューのことを知った時、何だ、って思った。
こいつもかって。
せっかくいい奴だと思ったのに。
俺がそんなモノでなければ……
「言いたいことがあるのに、吐いちまわないから、そういう顔になるんだぜ」
アレクセイが茶化す。
「どういう顔だよ! 言いたいことなんざねー!!」
アレクセイは笑いながらバスルームに消えた。
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