「答えになってないね。俺なんか、メチャクチャ便利だと思うぜ。怪我や病気があってもすぐ診てやれるし、銃も扱えるからボティガードにもなる。運転手して毎日送迎もできる。ベッドの中でもいくらでもガードしてやるぜ。そうすりゃ、青春真っ盛りの坊やもフラストレーションもなく快適ライフが送れるってやつ」
聞いているうちにロジァはまた頭がカッカしてくる。
「寝言は寝て言え!!」
「ハハ……そいつは名案だ、寝て言ってやるよ」
「……!! てめーは…」
そんなことを言い合っているうちに、アレクセイの車は彼のアパートメントの駐車場に滑り込んだ。
「さっさと降りた降りた。また傷口掴まれたかないだろ?」
「こんなとこに連れてけなんて誰が頼んだ!!」
「お願いだから、ダダこねないで下さいよ、ボス」
ふざけやがって!!
ここであのニヤケやろうと嬉しそうにキスしてたのは誰だよ。
ロジァは心の中で問いかける。
それなのに、何で俺に、あんな時に、愛してる、なんて言うんだ。
部屋まで連れられてきて、足が竦む。
「ボルシチ食わせてやるよ。昨夜から煮込んどいたんだ」
アレクセイは髪を後ろで結わえ、エプロンをしてキッチンに立つ。
のっそりとアーニャが擦り寄ってくる。
「座れよ、坊や」
アレクセイはグラスやナプキンをテーブルに用意しながら、立ったままのロジァに言った。
美味そうなボルシチの匂いが部屋中に漂う。
アレクセイは硬いバケットをナイフで切って皿に並べ、チーズの塊をスライスする。
その間にもアーニャに食事をやるのを忘れない。
バターケース、オレンジやアボガドなどを一緒にテーブルに並べ、熱いボルシチを入れた皿を二つトレーに乗せて持ってくる。
最後に赤ワインを持ってきて、エプロンを取った。
「快気祝いな」
アレクセイはワインのコルクを抜いた。
コクコクとグラスに注がれる赤い液体を見つめ、ロジァは胸を切なくする。
ガードなんかいらない。
「カンパイ」
アレクセイはやけに陽気だ。
グラスを持っただけのロジァのグラスに自分のグラスを合わせる。
そして一口飲むと、ロジァをじっと見つめた。
「どうした? 飲まないのか? 今夜のために買っといたシャトー・ラトゥールだぜ」
あいつにもそんな風に言うわけだろ?
ひどく息苦しい。
でなくてもいろんな女、いるじゃないか。
ロジァはむっつりしたままグラスを口に持っていく。
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