春立つ風に33

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 何にせよ、佐々木淑陽先生から出演のご快諾を得たということで、良太は玄関を出たところで大きく溜息をついた。
 難関突破!
 とにかく年配の女性とかもうほんとカンベン!
 年配の女性といえば、と、良太の脳裏には、ハロウインの魔女オバサンが一気に蘇る。
 工藤の祖母、中山多佳子に引っ掻き回された時のことは思い出したくもない。
 おそらくもう逢うことはないだろうと思うのだが。
 年配の女性といっても、軽井沢の杉田さんとか、鈴木さんとかには良太も世話になっているのだから一概には言えないが、工藤もどうやらあまり逆らえない存在らしい。
 乃木坂に戻る前に、佐々木が来るときいつも土産に持って来てくれる一番町の和菓子屋に寄った。
 ここのきんつばはまた美味しいのだ。
 鈴木さんへの土産に買うと、良太は半蔵門通りから青山通りに出る。
 郵便局の交差点で外苑東通りへと左折して間もなく、青山プロダクションビルが見えてくる。
 駐車場で車を降りてオフィスへの階段を上がろうとすると、びゅうと強い風が吹き抜けた。
「ただ今帰りました」
 うう、寒い~、とブツブツ言いながらオフィスに飛び込んだ。
「お帰りなさい。ランドエージェントの野口さんからお電話がありましたよ」
「あ、はい」
 鈴木さんにきんつばを渡すと、「あらまあ、じゃあ、お茶にしましょうか」といそいそとキッチンに向かった。
「青山プロダクションの広瀬と申しますが、野口さんからお電話をいただきまして」
 何だろうと思いつつランドエージェントに電話をすると、野口に回された。
「すみません、お忙しいところ、実は、美亜がぜひご挨拶に伺いたいと申しまして、ご都合の程はいかがでしょうか?」
 美亜さんのことか。
 店を貸すのはやはりだめだとかじゃなくてよかった、と良太はちょっとホッとする。
 野口さんまで積極的だな。
 社長の野口といい、CEOの海老原といい、若手中心の会社だからか、重役でもふんぞり返ってっていうのとは違うのかも知れないが。
「そうですね、明日は出払っておりますし、僕も出たり入ったり致しますので、美亜さんのご都合に合わせますが」
「それでしたら、これからというのは難しいでしょうか?」
「え、これから、ですか?」
 四時半になろうとしているが、良太はこの後外出の予定はない。
「えっと、大丈夫ですけど」
「いきなりで大変申し訳ございません。今日美亜はオフで、こちらに来ておりますので、では早速伺います」
「はい、お待ちしております」
 キッチンから出てきた鈴木さんは、良太のデスクにお茶ときんつばを置くと、「どなたお客様?」と聞いた。

 


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