春立つ風に135

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『また、奈良県生駒市の国道一六八号線沿いで車が炎上し、車内から女性の遺体が見つかった事件においても、車の近くに落ちていた柏木弁護士の携帯に、今からそっちに行く、などという篠原容疑者からのボイスメールが残っていたことから、この事件においても関連があるとみて警察は調べを進めています。篠原容疑者は、この二つの殺人に関しては否認を続けているということです』
 生駒市の車が炎上したあたりが映され、近くの住人の話を最後に、篠原関連のニュースは終わった。
 みんなニュースを黙って見ていたので、良太がテレビを消すとやっとで緊張が緩む。
「今回、篠原容疑者って名前を公表したのは、薬物の横流しで自白が取れたからですか?」
 良太が千雪に尋ねた。
「せやろな。ただ、殺人に関しては否認してるらしいけど、おそらく有罪に持ち込めるだけの証拠があがったんか知れん」
 そう言いながらも千雪は別の何かを考えているようだと、良太は思った。
 とその時だ、良太の携帯が唐突にワルキューレを奏でた。
わっ! と驚いたのは森村だけではない。
「びっくりした」
 山倉が苦笑した。
「はい、お疲れ様です」
 一呼吸おいて、良太は工藤からの電話に出た。
「千雪らと一体何をコソコソやってるんだ?」
 労いの言葉どころか、俺だ、くらいの挨拶もなく、いきなり本題で怒鳴られる。
「『いまひとたびの』のドラマの打ち合わせです」
 良太はしゃあしゃあと嘘をつく。
「打ち合わせだと? 山倉や辻が何でドラマの打ち合わせだ!」
「打ち合わせです。辻さんには京都の情報をいろいろ教えてもらってます。山倉さんは休暇だそうです」
 あくまで打ち合わせを連呼する良太に、工藤も根負けしたように、「明日帰るんだろうが、大概にしておけ!」と言って切ってしまった。
「フン、何が大概にしておけだ!」
 良太は切れた電話に悪態をつく。
 工藤は日比野と話しながら部屋に上がって行ったくせに、ラウンジでコソコソやってたのに気づいていたようだ。
 クッソ、俺があんたを守るために動いてどうなろうと、俺の勝手だってんだ!
 せっかく京都にいるというのに、同じホテルにいるというのに、きっと工藤の顔を見ることなく明日は東京に戻るだろうと思うと、良太は胸のあたりがヒリヒリ痛むのをどうしようもない。
 柏木弁護士には悪いけど、亡くなってガックリきてる工藤にかける言葉など良太には思いつかなかった。
「あの、すみません、皆さん、こんな遅くまで。モリーも明日早いんだろ?」
「俺は大丈夫です!」
 森村は明るく笑って立ち上がり、「では、明日また。おやすみなさい!」とドアへ向かう。
「ほな、俺らも、帰るわ」
 辻と山倉が立ち上がった。
 だが、「ああ、俺、眠なったし、このまま泊ってこかな」と千雪が隣のベッドに横になった。

 


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