メシ食ってねーんだよな。
キョウヤの言葉に、良太ははっと思い出した。
何であの時、一緒に食べるって言わなかったんだろう。
『メシでも食うか』って、工藤が言ってくれたのに。
何で素直になれなかったんだろう。
つまんない意地張ってさ。
俺のことなんかどうでもいいんだ、なんて思って。
一緒にメシ食ってたら、俺は今の仕事をやりたいんだって、あんたの傍でやりたいんだって、ちゃんと言えたかもしれないのに。
周りが盛り上がる中、良太の心は急降下する。
哀しい。
こんな哀しいイブはいやだ。
「どうした、良太ちゃん。顔が沈んでるよ」
はっと顔を上げると、藤堂が覗き込んでいる。
「あの……」
「ん?」
「俺、帰ります」
「そう? あ、良太ちゃん、ちょっと待った」
ソファから立ち上がり、真っ直ぐ玄関へ向かう良太を、藤堂が慌てて追ってきた。
「ほんの十分、待っててくれないか? コートとプレゼント、忘れてるよ」
あ、と良太は藤堂からコートとプレゼントの入った紙袋を受け取った。
「いいかい、ほんの十分だからね、そこにいて」
にっこり笑った藤堂は、レストルームの横の小部屋に消えた。
やがて現れたのはお馴染みの赤い服に帽子、真っ白な髭をたくわえ、大きな袋を持ったサンタクロースだ。
「レディース、アンドジェントルマン!」
途端に拍手喝さい、掛け声が飛び交う。
「たった今、サンタクロースの街からやってきました~。私から皆さんにプレゼント、あります~」
藤堂サンタは皆にそれぞれ、袋の中からラッピングされたプレゼントを配っていく。
そして、最後に玄関近くにぼうっと突っ立っている良太の前に来ると、袋の中から細長い小ぶりな包みを取り出した。
「今の仕事を選んだ君に。パソコンの時代だけどね、持ってても腐るもんじゃないし」
白い眉と髭の奥で藤堂が笑う。
「ありがとう、サンタさん」
良太も笑って受け取った。
「相手が相手だけに、良太ちゃんも大変だね~」
ドアが閉まる時、えっ、と振り向くと藤堂サンタが「メリークリスマス!」とにこにこ手を振った。
エレベーターのドアが開くのも待ち遠しく、河崎のマンションを後にすると、タクシーを拾おうと良太は大通りに走った。
時計は十二時を少し回ったところだ。
工藤はまだ戻ってはいないだろうけど。
たまに帰る程度で高輪の部屋を放りっぱなしだから、今日はハウスキーピング協会から必ず帰ってチェックして、書類にサインをくれと言われていると、工藤がぼやいていた。
気温が下がり、雨はみぞれ混じりになって落ちてくる。
冷たい雫が髪から顔に伝う。
なかなかタクシーも捕まらない。
首都高の下をとぼとぼと歩きながら、やっと停まったタクシーに乗り込むと、良太は運転手に、高輪四丁目を告げた。
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