シャンパン、ワイン、ビールが所狭しと並び、大きなケーキも中央に鎮座ましましている。
食器類はどう見ても、決してケータリングサービスでは使われないデザインのものだ。
「すげー」
何よりリビングからの眺めに、思わず良太は声を上げる。
大きな窓の向こうにはすばらしい夜景が広がっていた。
良太がソファの上に寝そべっている猫とじゃれているうちに、いつの間にか意気投合したらしい直子とマヤが浩輔を手伝って、きゃあきゃあ言いながら、クリスマスツリーの飾り付けを始めた。
しばらくすると一見して見るからにエリートという風情の男が一人やってきた。
プラグインのスタッフの一人、三浦である。
三浦とは、アスカや志村嘉人の広告関係の仕事で良太も面識があった。
三浦も元は英報堂の営業だったという。
アスカが秋山を伴ってやってくると、パーティは一層華やいだ。
そこへ藤堂が到着すると、彼が用意した年代もののレコードプレーヤーにLPがセットされ、ビング・クロスビーの歌う『ホワイトクリスマス』が流れ始める。
シャンパンが抜かれ、「メリー・クリスマス!」と、各々手にしたクラッカーを鳴らす。
そのうち人気ロックグループ『イリュミネ』のメンバーが賑やかにやってきた。
マネージャーの青木は見かけたことがあるが、良太がメンバーと口を聞いたのは初めてだ。
ライブが終わってすぐに駆けつけたらしい。
「腹へった~、朝パン齧っただけで、俺、メシ食ってねーんだよな~」
ボーカルのキョウヤは一際陽気で、早速料理へと走る。
「なーんだ、じゃあ、もうCMやらねーのかよ? 俺らの曲使って、またやればいいじゃん」
良太ともすぐにタメ口だ。
キョウヤは佐々木とも知り合いらしく、一方的にじゃれている。
宴もたけなわの十時を過ぎた頃、この部屋の主である河崎が帰ってきた。
「お帰りなさい」
浩輔より早く猫が迎えに出た。
河崎の足元にじゃれて離れない。
河崎は猫の頭を撫でると、コートを脱いで無造作にソファに放る。
「先にやってるぞ」
藤堂が言うと、河崎は返事もせずに煙草をくわえる。
「お疲れ様です」
良太が一応挨拶すると、それでもちょっと目で挨拶を返す程度だ。
「シャンパンでいいですか?」
浩輔がいそいそと河崎に飲み物を運んでいく。
「さあて、全員揃ったところで、プレゼント交換と参ります。皆さん、ツリーの周りに集まって」
藤堂の合図で、皆がツリーの周りをぞろぞろと囲む。
大騒ぎのプレゼント交換も、最後に残ったキョウヤが罰ゲームで見せたモノマネも、その後のダンス大会もとても楽しくて、子供の頃に戻ったようなホームパーティである。
確かに楽しいはずなのだが、どうしても良太の心は弾まない。
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