たまにはクリスマスを6

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 財界の重鎮、東洋グループの次期CEOと目される東洋商事社長の綾小路紫紀と結婚した小夜子は、老舗呉服問屋大和屋の一人娘で、両親は綾小路家の籍に入ることを最初渋ったが、結婚後も変わらず仕事を続けることで納得し、小夜子は今も大和屋の広報を務めている。
 紫紀の前妻の息子大に続き紫紀との間に小学校二年の京、幼稚園児の雪乃がいる小夜子は、クリスマスは家族で過ごすことになっているのだが、ここ何年も年末忙しく過ごしてクリスマスなどなかった千雪を心配して、食事に誘ってくれたのだ。
 どこにいるの、と小夜子からラインが来たので、乃木坂にいると返すと、小夜子はタクシーで青山プロまで乗り付けた。
 千雪が乗り込むと、小夜子は運転手に永福町を告げた。
 綾小路家の隠れ家的料亭『泉水』は周りを塀で囲まれた一見して古い大きな屋敷だった。
 料亭となってはいるが、オーナーシェフ泉水は和食はもとよりフレンチやイタリアン、創作料理など多彩な腕前で、客の要望に合わせて用意してくれる。
 その夜のディナーは、フレンチをベースにした泉水の創作料理だが、小夜子や千雪に合わせて量はそこそこ、プロバンス風のホタテや牛肉の煮込みが実に美味い。
 デザートはクリスマスバージョンで小さなブッシュドノエルにフローマージュブランのタルトがイチゴやベリーで彩られている。
 もちろん、客は二人だけだ。
「今年もクリスマスはないの?」
「ないなあ」
 フェラガモの黒いニットドレスに、プチダイヤのネックレスとシンプルな装いも小夜子に良く似合っている。
「あ、チビさんたちや大に俺と京助からプレゼント送っといたで? 二十四日には着く思う」
「ありがとう。みんな喜ぶと思うけど、一緒にクリスマスを過ごしたのって、あなたたちがニューヨークに留学してた時、パリまで来てくれた、その時だけよ?」
「あーあ、そんなこともあったなあ」
 あの頃はほんとのんびりクリスマス休暇を満喫していた。
「あれやな、俺らがクリスマスを過ごすには、またどっか行くしかないんちがう? 年末は事件や事故が増えて、京助らもてんてこ舞いらしいし」
 しれっと口にする千雪を見て、小夜子は一つ溜息をつく。
「しょうがないわねえ」
「その代わり、年明けたら初釜も顔出すし、京都には三が日開けたら行こ思てる。それにスキー合宿に京助なんか力入れとるしな。今年は一月の終わり頃から二月にかけてまとめて休暇取るし」
「そうね、でも年末、ムリして身体壊したりだけはしないでね」
「ああ、わかっとるて」
 だが、そんな毎年のスケジュールを、無理やり京助は変えろという。
 週末、どこか行くつもりやろか。

 


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