たまにはクリスマスを7

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 とりあえず金曜の夜までに多部に文句を言われないように原稿をあげようと、部屋に戻った千雪は愛犬のシルビーの散歩から帰ってくるとパソコンに向かった。
 
 
 

 毛布をはぎ取られて起こされたのは、金曜の夕方のことだ。
 多部に追いかけられないようにと、なんとか原稿を送ったのは午後二時頃だった。
 それから千雪は泥のように眠り込んでいた。
「どうせ何も用意してねえんだろ」
 京助は勝手知ったるで、千雪のキャリーケースに衣類や下着やたったか詰込み、着替えのセーターとパンツを放ってよこした。
「何や……もう徹夜続きでやっと寝られたん昼過ぎやで」
 欠伸をしながら、千雪は文句を言った。
「車の中で寝ていけばいい。たったか着替えろ」
 京助はシルビーの車用の必需品、毛布やハーネス、水やご飯用の器、などなどをひとまとめにして大き目のトートバッグに入れると、シルビーを散歩に連れ出した。
「戻るまでに用意しとけよ」
 その背中を睨み付けながら、「フン、命令しよってからに!」と千雪は喚く。
 京助も忙しいところを無理やり時間を作ったのだろう、法医学教室にもシフトはあるのだが、事件や事故は予定が立たないため何かにつけて呼び出されるから、意味を成していない。
 それだけ富永教授も京助を頼りにしているようだ。
 とりあえずトイレに立った千雪だが、頭がまだ薄らぼんやりしていて身体が覚めない。
 シャワーを浴びて、バスローブでウロウロしているところへ、京助とシルビーが戻ってきた。
 京助はシルビーに水を飲ませると、冷蔵庫からサンドイッチを取り出した。
「向こうに着いてから飯にするが、どうせ、小腹が空いてるんだろ」
 そこのところも千雪よりよくわかっていて、京助はいつ食べてもいいようにとサンドイッチを多めに作っておいた。
 コーヒーを淹れて、ダイニングテーブルに座った千雪の向かいに京助も腰を下ろした。
「車で行くんか? ってか、どこ?」
 千雪は肝心要のことを問う。
「白馬」
「白馬あ?」
「軽井沢のでかい屋敷に二人とか、寒すぎるだろ」
「まあ………」
「それに、俺らがあそこにいることが筒抜けになるからな、うちに」
 千雪もそれは何となく嫌だった。
 おそらく管理人から綾小路の執事藤原に連絡が行くのは目に見えている。
 そうすると小夜子や紫紀にも筒抜けになるわけで。
「大体、今頃、東洋商事の連中が使ったりしてるだろ。早いとこ予約でもしておかなけりゃ、この週末使うのは無理だ。知らない連中と一緒ってのもごめんだしな」
 軽井沢の大きな別荘は、綾小路家の所有だが、東洋グループの社員なら予約制で利用できる。
 食事以外無料だから、クリスマスや夏休みなどシーズンは争奪戦だ。
 綾小路家のイベントは既に前年度に決定するので、それにぶつからなければいいのだが。

 


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