嘉月6

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「やだ、紫紀さんって面白いのよ。ちゃんとお席にも入ってくれたし、着物ショーにも係り員になってお客様を先導もしてたわよ。大ちゃんや京助さん、千雪さんも総動員で」
 直子は思い出して笑う。
「びっくりしたよ。着物ショーちょっと覗いたら、紫紀さんがいるからさ。まあとにかく、紫紀さんとしては佐々木さんを起用したいらしいんだ」
「うーん、だったらもう日程の調整だけよね。ほら、八木沼選手のCMもあるじゃない?」
「だね」
 そういえば、八木沼選手は佐々木さんに岡惚れ状態だったけど、どうなったんだろう?
「三月までもうこれ以上仕事を入れなければ、OKだと思うよ」
「イレギュラーなのが入らなければだね」
「まあ、そうね。あ、多分、だけど、今日は沢村っちとスキー行ってるはずだから、二人まとめて聞いちゃえば?」
「え?」
 聞いちゃえば、って軽く言われても。
 そんなお邪魔虫なこと。
 だがしかし。
 聞いちゃえば、という直子のノリで行くしかないかと、良太は沢村の携帯をコールした。
 うう………まさか、イチャイチャの最中じゃなきゃいいけど。
 コールして、八回ででなければ時間をおこう、と良太が思ったその時。
「何だ? 取り込み中に!」
 超不機嫌そうな沢村に、あちゃあ、やっぱやばかったか、と思う良太だがもう遅い。
「わりいな、仲良くしてる最中に」
「パスタ茹でてたんだよ!」
「パスタあ? お前が?」
「いいから何の用だよ? よほど緊急なんだろうな?」
 良太は実は、と切り出した。
「お前にまたCMのオファーが来てる」
「んなもの断れ!」
「それが佐々木さんとセットでなんだ」
「は?」
 良太は一応、簡潔明瞭に話した。
「俺はいいが、佐々木さん次第だな。ちょっと待て」
 ややあって、今度は佐々木が出た。
「紫紀さんから直接のミッションやて?」
 佐々木は少し笑っている。
「良太ちゃんとしては断るに断れないってやつなんやろ?」
「ああ、でも、佐々木さんのスケジュール次第ですから。もし無理なら……」
「平気や。三月までは野球選手の仕事のみに集中したらええんやろ?」
「ほんとに大丈夫ですか?」
 佐々木としてもおそらく沢村との仕事であれば、やりたいのではないか。
 良太はそんなことを考えた。
 佐々木は、俺らはええけど、今度は代理店が問題やな、と言っていた。
「代理店か。プラグイン、藤堂さんっきゃないよな。うまくスケジュール合えばいいんだけど」
 そう言えば、藤堂さん、年明けはプラグインじゃなくて、ギャラリーの方の仕事で忙しいんだっけ?
 若い三人のアーティストの展示会がちょうど第二土曜日から月末までという案内状が良太の手元にも届いていた。
「今日はプラグイン、営業中だよな」
 プラグインに電話をすると、浩輔が出て、藤堂はギャラリーにいるからと回してくれた。
「藤堂さん、今日もフルタイムで仕事ですか?」
「良太ちゃんとこの大将なんか年末年始なかっただろう?」
 お茶目な切り返しに良太は笑った。
「ま、そうなんすけど」
 良太が熱海の両親のアパートでグータラしている時にも、工藤と映画のスタッフ陣、俳優陣は京都で撮影だった。
 映画に出演している能楽師の檜山は謡初めとして本業の能の公演が六日に国立能楽堂であるそうなので、檜山のスケジュールに合わせると、五日、今日までに撮影を済ませなくてはならなかった。

 


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