片や良太の両親や妹は青山プロダクションの親睦会計画を手放しで喜んでいた。
「ねえ、宇都宮さんはこないの?」
「うちの会社の親睦会だから。宇都宮さんなんか関係ないだろ」
妹の亜弓に聞かれてすかさずそう答えた良太だが、亜弓は人気俳優の宇都宮本人に会ってからずっと舞い上がっているようだ。
宇都宮のドラマも全て録画して何度も見ているらしい。
良太としては早いとこ彼氏でもみつけて、宇都宮のことをただの俳優と思ってくれることを祈っているのだが。
「何か特別な案件のご相談かな?」
藤堂も察しが早かった。
はい、と話し始めた良太の言葉を途中で遮って、藤堂は続けた。
「OKOK。大丈夫だよ。また四人でタッグを組むわけだね?」
「え、あ、まあ………四人というか」
そこで良太は、自分はあくまでも沢村の窓口で、などとも言えない。
「まあ、いいじゃない、良太ちゃん。やろうよ! これまでにないいいものができるに決まってるよ」
俄然藤堂はヒートアップして来たようだ。
こうなったら何かに邪魔される前に、たったか紫紀にも連絡を入れよう。
良太は東洋商事に電話を入れ、紫紀に取次ぎを頼んだ。
すると紫紀は今社内にはいないが、向こうからすぐコールバックすると、秘書の野坂が言った。
「やあ、良太ちゃん」
五分もしないうちに紫紀から電話が入った。
「緊急事態かな?」
「あ、すみません、実は例の沢村の件ですが」
「快諾してくれた?」
何となく紫紀は勢い込んでいる。
「はい。沢村も佐々木さんもOKだそうです。代理店はプラグインで、担当は藤堂になります」
「さすが、良太ちゃん、仕事がはやい! わかった。早速プロジェクトをすすめさせていただくよ」
ってか圧をかけてきたのはそっちでしょう。
良太は心の中で反論する。
「いや、実を言うとね」
ほら来た。
良太は心の中で呟いた。
絶対何かあると思ってたんだ。
「今年の我が社のCMキャラクターに沢村選手を起用したいという話は、昨年アディノのCMが流れ始めた頃からあったんだよ。うちの企画部が構想を練っていて、他社代理店で進めようとしていたんだ。ところがだ。大きな壁にぶつかった。代理店の担当者から沢村選手からNOを突き付けられたとね。で、別の選手を使うという案を提示してきたんだが、こちらとしては首を横にふるしかなくてね」
「え………それって」
確かにいくつかの代理店から沢村へのオファーはあったが、それにそっけなくNOを突き付けていたのは良太自身である。
無論、沢村の意向は一応確認の上だが。
「再度、別の代理店に依頼してもみたんだが………その時、プラグインと佐々木さんは東洋不動産の仕事にかかり切っていたしね」
う、じゃあ、俺がけんもほろろにNOを突き付けた中の二つが、東洋商事だった?
いや、クライアントがどこだまで聞かないうちに、NOだった気もする。
「どんな大企業だろうと、NOって言っておけよ」
偉そうに命令した沢村の顔が思い出される。
「そこで、私が代理店の担当に、沢村選手の代理人を聞いたら渋々教えてくれてね。それが何と青山プロダクションの広瀬さん、だったわけだ」
「ははは……」
良太は空笑いした。
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