霞に月の45

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「だれ? 高広、とか言っちゃって」
 早速ひとみが良太に聞いてきた。
「高校のクラスメイトだそうです。法医学の香坂准教授」
「ふーん? やけに馴れ馴れしいわね」
 ひとみはチラリと香坂に視線を飛ばして言った。
「ま、でも大丈夫よ、良太ちゃん。高広はあんな女に屈するような男じゃないから」
 良太の肩を持つというつもりなのか、ひとみはグラスのワインをゴクゴクと空けた。
「また、ひとみさん、飲み過ぎないでくださいよ?」
 傍らにいる須永の声には泣きが入っている。
「これしき序の口でしょ。もう、あんたは私のおもりなんかしてないで、あちこちにいる女の子と話してくればいいじゃない。こういう機会を利用しなくてどうするのよ」
「そういえばひとみちゃん、今度のドラマ座長だっけ?」
 宇都宮が言った。
「えっと、公式に広報から第一報も出ましたよね」
 良太が確認するように言った。
「そ。この子、天野くんが相棒なの。いいでしょ」
ひとみにかかると、大柄な天野ですら、この子扱いだ。
「ちょ、それ、まだ、公式に言ってませんから」
 慌てて良太はひとみに言った。
「小出しにしちゃって、ケチ臭いわね」
 ひとみは傍を通りかかったホールスタッフからまたワインをもらう。
「そりゃ、視聴者の期待を煽った上で発表した方がいいだろう」
 宇都宮が笑う。
「にしても天野くん、大きいね、身長どんだけある?」
「一八八です」
 軽く問う宇都宮に、畏まって天野が答えた。
「うわ、俺よか四センチも高い」
「若い子に張り合ってどうすんのよ、トシちゃん」
 酔い始めたひとみがケラケラ笑う。
「や、舞台映えするよな。俺、君の噂耳にしていっぺん舞台見に行こうと思いつつ、ずっとスケジュール重なっちゃってまだなんだけど、VTRでみたよ」
「光栄です!」
 天野がちょっとはにかむような顔をした。
 良太は、こんな顔もするんだと、天野を見やった。
「俺も見せてもらったんですけど、カッコいいですよね、インカ帝国の王とか」
「そうそう、『ピサロ』、よかった」
 良太の言葉に宇都宮がうんうんと頷いた。
「ありがとうございます」
 天野は宇都宮に尊敬の眼差しを向けている。
 すると天野の肩越しに、藤堂や佐々木らと合流したらしい秋山が良太を手招きしてるのが見えた。
「あ、すみません、秋山さんが呼んでるみたいで」
「良太ちゃん、人気ものだからな」
 宇都宮が笑いながら言った。
 良太はすかさず気になっていた中井と高野を見ると、キョウヤを交えて直子や美紀らと笑っている。
 ま、いっか。
 良太の後にくっついて動いていた森村は、いつの間にか小野寺と盛り上がっている。
 ちらっと工藤を見ると、まだ香坂らと話し込んでいるようだ。
 何だか、千雪のお膳立てが急展開しそうな勢いに、ひょっとしてこれはかなり大成功? などと良太は苦笑した。
 秋山の時もそうだったが、高校の同級生というキーワードは結構重要な意味をもつのかも。
 ちぇ、俺だってさ、実は高校の時、工藤とニアミスしてたんだからな、なんてな。

 


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