何せ、カラオケをやるもの、踊りだすもの、はじけきった夜が深まると、度をこえた酔っ払いが、リビングのあちこちで死屍累々と倒れ込む姿が見られた。
「最後のモエ、開けるよー。美利ちゃん、飲む?」
垪和が言った。
「わ、飲むー。勝浩くんは?」
「俺はいいよ」
見かけによらず、というか、どうやらこの会の女性陣はみんな強いらしい。
焼酎で盛り上がっている男どもには、リリーが混じって大騒ぎだ。
幸也はひかりや検見崎とゆったりと酒を飲んでいる。
煙草をくわえながら談笑する幸也には、犬たちと一緒に勝浩と接しているときとは全然違う雰囲気があった。
きっと大人のつきあいをしているのだ。
もともと、お互いに交わることのない道を歩いているのはわかっていたはずじゃないか。
そうは思っても、目の前で事実をつきつけられると、勝浩はまた自分の感情をコントロールできなくなってきた。
「厄介だよな……。風にあたってこよ…」
ベランダに出て空を仰ぐと、雲もなく月がひどく明るく輝いている。
月の光を浴びた木立は青い影を落とし、柔らかな風に揺られて夜の森は嬉しげにうごめいているようだ。
「すんげえ月。俺が焼いたホットケーキみてぇ」
背後からそんな声がした。
「それ、宇宙開発やろうとかいう人が言う言葉ですか」
振り向かなくても、昔から聞きなれた声だ。
「見たままの素直な感想」
手にあるグラスの中はウイスキーか何かだろう、一口飲むと、幸也は勝浩の横に来て、手すりにもたれかかる。
「ホットケーキなんか焼くんですか?」
「向こうで、癖になってたな。ブランチの定番メニュー。今度、作ってやるよ、うまいぞ」
「……そうですね。楽しみにしてます」
さりげなく会話を合わせるくらいはできる。
けれど、そんな幸也の言葉に、一喜一憂している自分の心に時々ついていけなくなる。
「こうして空見てると、ほんとに自分がちっぽけだって痛感しますね。地球もこの広い宇宙の中のほんの小さな星なんだから」
「塵芥にも匹敵しないってとこかな、宇宙の中の人間の存在なんて。地球は宇宙っていう海の中に漂うプランクトンで、するってーと、人間はそれよりもっとミクロなしろものってことか」
「宇宙って膨張してるって、きいたことありますけど」
「ビッグバンね。まあ、そのミクロな人間はいろんな理論を打ち立ててみるのさ。実際解明するのは限りなく不可能に近いわけだから、勝手に想像するのは自由だろ」
「そうですね」
自信ありげに持論を展開する幸也に勝浩は笑う。
「ガキの頃から、よく考えてたな。宇宙の果てまで行ってみたいってさ。こう、ワープとかして、星が誕生するとことか、死滅するとことか、この目で見て見たいね」
「何だか、ちまちまあくせくしているのが、バカみたいだな、ミクロな人間たちが」
「バカ言え、お前らしくもないぞ。動物の生命を考えていこうってお前が。どんなミクロなやつにも主義主張ってもんがあるってことだろーが」
ちょっと語気を強くして語る幸也に、勝浩は驚いて苦笑いする。
back next top Novels
