良太は留置場など居心地悪いだろうし、風呂とかトイレとかどうすんだろう、と考えて、オフィスにたまたまやってきた平造に聞いたことがある。
「トイレは中にあるが、他に人がいりゃ使いづらいな。風呂も三日にいっぺんくらいだ」
それを聞いていたので、工藤もかなりうらぶれているのではと思ったのだが、案外清潔そうだったし、釈放が決まった時に小田に衣類などを持って行ってもらったので、スーツもビシッと髪も撫でつけてほぼいつもの工藤だった。
バスローブで楽に食事ができるのも容疑が晴れたからこそだ。
良太は未だに工藤に濡れ衣を着せたやつらのことを考えると腸が煮えくり返る思いだが、千雪やみんなのお陰でこうして普通にそこにいる工藤を見ると、帰ってきたんだ、と再認識する。
よかった。
ほんとに。
しかしまた工藤を犯人扱いした警察の態度を思い出すと、良太はまた怒りがふつふつと沸いてくるのだ。
申し訳ありませんでしたくらい、しっかり言ったらどうだよ!
実際、工藤を見送って頭を下げたのは、捜査一課の中で工藤を早々と起訴するのに異議を唱えた二人、渋谷と橋本だけだった。
「何をイラついてるんだ?」
警察の対応を思い出して、フォークとナイフを握りしめて眉を顰めている良太に気づいて工藤が言った。
「だって、あの警察のやつら! 申し訳ありませんって謝罪したの、渋谷さんと橋本さんだけだったんだ。ふざけるなって!」
工藤はフンと鼻で笑った。
「警察なんざそんなもんだ」
「千雪さんがボロクソに警察を罵倒してたの、ホント全く同意だ!」
思わず良太は肉にナイフを思い切り突き立てた。
「あいつも昔、容疑者にされて事情聴取されたからな。しかもその時のバカ面の刑事がよく調べもしないで頭ごなしだった」
それを聞いて良太は、あれ、と思う。
「その時のこと知ってるんだ?」
問われて工藤は口が滑ったことに気づいた。
その時千雪のアリバイを証明したのが工藤で、アリバイというのが軽井沢に千雪を連れて行ったからだった。
「京助と俺がたまたま事件に関わっていて、千雪のアリバイを証明したからな」
工藤はニヤリと笑う。
言葉上ではウソはない。
千雪のアリバイを証明したのは工藤だけだったのではあるが。
「フーン。その時容疑者扱いしたの、渋谷さんだったから、千雪さん、渋谷さんに対してきっついんだ?」
「まあ、渋谷は当時まだ駆け出しだったからな。だが、それでもその事件の真犯人が知り合いの刑事だったことを突き止めたんだ」
「ええ? 刑事が犯人? それもう終わってますよね。ってか何で、千雪さんが犯人にされちゃったんですか?」
「警察が無能だったからだろ」
正直、工藤はこの話題はもうこれくらいにしたかった。
藪をつついて蛇を出しかねないからだ。
「佐々木さんとこの直子さんまで巻き込んだって?」
いきなり言われて、うっと良太は食べていた肉を喉に詰まらせそうになった。
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