夢ばかりなる5

back  next  top  Novels


「誰が能天気なぼっちゃんだ、だれが! 第一、お前、オフにはアメリカに行くんじゃなかったのか? 向こうでチーム作るんじゃなかったのかよ」
 一人物思いにふけっていた肇はいきなりの良太の発言にはたと目を見開いた。
「え、それ、ほんと?」
 かおりが身を乗り出した。
「お前が俺を振るからだろ」
 サラリと沢村が口にする。
「ええええええ、二人はそーゆー仲だったのぉ?!」
 さらにかおりは耳ざとく割って入った。
「そんなことくらいでやめちまうような気合いの入れようなら、やらない方がマシだ」
 良太も酒が入っているから、考えなしに言い返す。
「………おい……お前ら、そんなこと、こんなとこで言っていいのか」
 二人の言い争いに、嬉々として合いの手を入れるかおりの横で、肇は固まった。
「誰がやらないなんて言ったよ、準備は着々と進んでる。そのために知り合いと会社も作って、他のプロジェクトも考えてるとこだ」
「へえ、そうなのか?」
 沢村という男がクレバーだということは、良太もいやというほど知っている。
 子供の頃から良太とは何かにつけて火花を散らし、熱くなって殴り合いの喧嘩になったことも一度や二度ではない。
 だが、折に触れて、沢村が子供にしては非常に冷めたところがあるのを良太は知った。
 その行動には計算されたものがあるのだということも。
 番組を通じて再会してからも、沢村が尊敬する名監督のデータを重んじた理論に共感し、実際、沢村のノートパソコンには各選手から監督やコーチに至るまでびっしりデータが入っていた。
 だからこそ、会社を作るというのも、沢村ならば今更驚くことでもないのだ。
「そうだ、日本でもチーム作ろうぜ」
「そんな思いつきで作ったチームなんかすぐつぶれるに決まってる」
 良太は沢村にくってかかる。
「つぶれるもんか。お前がいればな。日本で作るんなら、文句はないだろ」
 何だ、そういうことか、と目を白黒させていた肇は勝手に解釈する。
「いや、そうじゃない、そんな重要なこと、こんなとこで話していいのか?」
 我に返って、今度は肇は二人をたしなめようとする。
「いいんだ。もう球団側には公言してる。会社っていっても実のところ、俺は今のところスーパーバイザー的な位置でしかないけどな」
 沢村はへらっと笑う。
「そうか」
 肇は説得力のある沢村にうなずいた。
「まあ、日本にチームを作るといっても、プロ球団とかじゃなくて、野球の好きな奴集まれ、みたいな。子供でも大人でも、広く門戸を開いて野球やろうぜ、ってな」
 沢村の話を聞くと良太も思わずぐっとくるものがあった。
「あら、あたしも混ぜてよ!」
「それはもう」
 かおりの発言に沢村はにっこり笑顔を返す。
 これが滅多に見られない世の女性たちを片っ端から落とすといわれている必殺の笑顔なのだが。
「あたしはプレーはしないけどスタッフ、やっぱマネージャー志願!」
 はい、とかおりが手を挙げる。
「かおりちゃんなら、もう、何やっても許されるから、OK、OK!」
「俺だって、まだ野球はやりたいさ」
 肇もポツリと口にする。
「決まりだ。じゃあ、良太とかおりちゃんと飯島、三人セットなら早速明日から立ち上げだ!」
 悦に入って雄たけびを上げる沢村に、待てよ、と良太が口を挟む。
「三人セットなら、って何だよ?」

 


back  next  top  Novels