月鏡49

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 京助は駐車場からまだ上がって来ておらず、檜山と千雪はエレベーターが降りてくるのを待っていた。
 数人の客がバラバラとフロントに向かい、千雪は何気なく良太を見、またエレベーターの方を見てから、再びフロントに目をやった。
 その時、フロントでFAXを受け取っていたはずの良太の姿がないことに気づいた。
「え……」
 すぐに周りを見渡した。
 と、入り口の回転ドアからちょうど二人の男に挟まれた良太らしき姿が外へ出るのが見えた。
「匠、部屋、戻っとき!」
「え……?」
 千雪の声にただならぬものを感じた匠は、初めて良太がいないのを知った。
「俺も行く!」
「あかん! 匠が怪我でもしたら良太の責任になるで。部屋で連絡係りや」
 あとを追おうとした匠を千雪は制した。
「京助、良太、やられた! ホテル右出て朱雀!」
 携帯で京助を呼び出した千雪は、出口を出たところで良太が乗せられた黒のバンが走り去るのを視界にとらえた。
 数分で京助が運転するレンジローバーがエントランスに現れた。
 待っている間に辻に事態を伝えた千雪は、助手席に乗り込む前に、落ちている携帯を見つけた。
 良太のものだった。
 京都の最終日、もしやと思った千雪が皆に言い渡していたため、京助だけでなく今夜は千雪を含めて誰もアルコールを取っていない。
「白川通りや!」
 千雪はタブレットを開き、アプリを開いて画面を見つめながら声を張り上げた。
 携帯の向こう側では、辻の運転するSUVが、二台のバイクを従えるようにして猛スピードで走っていた。
 ナビシートには加藤が乗り込み、同じくタブレットの画面を見ながら辻に良太の上着の内側につけておいたGPSを追う。
 一方、部屋には戻ったものの、気になって仕方がない檜山は、撮影の間に親しくなった森村の携帯を呼び出していた。
「あ、モリー! 今どこ?」
「良太くんの動きがおかしいので、車でGPS追ってます。千雪さんが良太につけてたでしょう?」
 やはり森村は素早かった。
「そっか、こっちも俺以外みんな、良太のことを追ってる」
「じゃあ、伝えてください。おそらく修学院桧峠町にある屋敷に向っている」
「わかった」
 檜山は千雪の携帯を呼びだし、それを伝えた。
「檜峠町やな? 了解」
 それを聞いていた京助はぐんとアクセルを踏んだ。
「そこに屋敷があるらしいで」
「フン、やつらのアジトか」
「アジトとか言うたら失礼やろ。こないだのチンピラとちごて、魔女の館やし」
 吐き捨てるように言う京助の言葉を千雪が訂正した。
「せえけど、ほんまに最後の最後で動きよったな」
 千雪は淡々と感想を述べた。
「しびれを切らしたんだろ。俺らずっと良太の周りに張り付いてたからな」
「ほんまに何の用があるんや? 良太に。それが疑問や」
「表だって会社に逢いに行くわけにいかねぇからだろ」
「やから拉致るて短絡的過ぎ、アホちゃうか。ってか、何で良太?」
「さすがに工藤本人拉致ると、そこで関係性ができるから、ババアも孫の立場を一応考えてるんじゃね?」
「ほんで拉致るとか、やっぱアホや」
 千雪はすぱっと吐き捨てた。
 何となく良太に危害を加えるつもりはないような気がするが、断言はできない。
「GPS止まったで。ここが屋敷やな。京助、次の交差点で左曲がって」
 千雪はその屋敷に向かうべく京助に指示した。

 


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